世紀の極秘訪問を支えた「乗り物」たち! 米バイデン大統領キーウ訪問の異例づくしドライブ

異例の列車移動 10時間かけてキーウ入り

 バイデン大統領の車列はポーランドのプシェミシル駅へ移動し、現地時間21時40分頃、8両ほどで編成された特別列車が出発した。現在、空路によるウクライナ入りは断たれており、要人も民間人も鉄道によるウクライナ入りが比較的安全な移動手段なのである。旧ソ連時代に製造されたChS8型電気機関車を先頭に、豪華な造りの客車が後ろに続く。過去にキーウを訪れた各国首脳らもこのような列車に乗車したという。このVIP専用列車、元々は2014年に富裕層向けとして、ウクライナ南部のクリミア地方のツアー列車用に製造されたというが、戦争開始後は世界中の首脳を乗せて活躍を続けている。

ウクライナ国営鉄道の旧ソ連製電気機関車のChS8。8軸機関車で日夜ウクライナとポーランドの人流物流を支えている。キーウ入りの往路、バイデン大統領を乗せた客車を牽引した<br>※バイデン大統領公式Twitter @POTUSより
ウクライナ国営鉄道の旧ソ連製電気機関車のChS8。8軸機関車で日夜ウクライナとポーランドの人流物流を支えている。キーウ入りの往路、バイデン大統領を乗せた客車を牽引した
※バイデン大統領公式Twitter @POTUSより

 この列車はバイデン大統領の乗車を機に、ウクライナ国営鉄道が「トレインフォースワン」とニックネームをつけるなど、世界中の鉄道ファンも注目したということだ。現地時間午前8時、10時間という長旅を終え、キーウパサージュスキー駅に特別列車は到着した。

キーウパサージュスキー駅に到着したバイデン大統領。後ろの人物はシークレットサービスの護衛官だ<br>※ホワイトハウス公式Twitter @WhiteHouseより
キーウパサージュスキー駅に到着したバイデン大統領。後ろの人物はシークレットサービスの護衛官だ
※ホワイトハウス公式Twitter @WhiteHouseより

 余談だが、バイデン大統領が上院議員時代、米国の鉄道網である「アムトラック(全米鉄道旅客公社)」で自宅のあるデラウェア州ウィルミントン駅からワシントンD.C.まで通勤していたこともあった。実は「乗り鉄」とも言われるバイデン大統領。オバマ政権時代に副大統領を務めたこともあり、最寄りの「ウィルミントン駅」は「ジョセフバイデンジュニア駅」と改称されているほど。存命の要人の名前が付けられたケースは珍しい。案外、今回の長旅も苦ではなかったのかもしれない。

ダミー車列を編成し厳重に行動をかく乱 大統領は白いランクルに乗車

 駅に到着した大統領一行は用意された車列に乗り込み、現地時間の午前8時30分、ゼレンスキー大統領の待つ大統領官邸に到着した。驚くべきことに大統領が乗車したその車両は防弾装甲が施された白のランドクルーザーだった。通常、米国大統領が国外を訪問する際は必ず専用車などを持ち込むが、空路が断たれているため、今回は異例のランクル乗車となった。このランクルはアメリカ側が用意したものであるということだ。

ランクルから降り立ったバイデン大統領。リムジンやサバーバンの大統領専用車以外に乗車するケースは非常に稀だ<br>※ゼレンスキー大統領公式Twitter @ZelenskyyUaより
ランクルから降り立ったバイデン大統領。リムジンやサバーバンの大統領専用車以外に乗車するケースは非常に稀だ
※ゼレンスキー大統領公式Twitter @ZelenskyyUaより

https://www.president.gov.ua/

 アメリカ大統領が日本車に乗車するのは、1996年に国賓として日本を訪れた当時のクリントン大統領が天皇陛下と日産プリンスロイヤルに乗車されたのが最後であると筆者は記憶している。

ウクライナ大統領官邸に到着したランクル専用車。予備を含め2台が存在し、ウクライナの一般車と同様のナンバープレートを装着していた<br>※ゼレンスキー大統領公式Twitter @ZelenskyyUaより 
ウクライナ大統領官邸に到着したランクル専用車。予備を含め2台が存在し、ウクライナの一般車と同様のナンバープレートを装着していた
※ゼレンスキー大統領公式Twitter @ZelenskyyUaより 

https://www.president.gov.ua/

 しかしこのランクル、ナンバープレートは大使館ナンバーなどではなく、ウクライナの一般ナンバーが予備車ともに装着されている。襲撃などの際、目立ちにくい措置をためのダミーの一種なのかもしれない。また、在キーウ米国大使館の防弾仕様のシボレーサバーバンなどが存在し、車列にも組み込まれていたが、これらには乗車しなかった。

 キーウ訪問中の大統領車列。大統領を乗せた車列は25台ほどで構成されていたが、ダミーと思しき車列は18台ほどの規模だった。実際に大統領が乗車していたランクルはルーフステーのついていない白のランクルだったが、ダミーと思しき車列に組み込まれた白ランクルはルーフステーのあるタイプが2台や白のサバーバンが2台、警護用なのだろうか、ヒョンデ・スターリアやトヨタ4ランナー、キャデラックエスカレードなどが組み込まれた車列で構成されていた。なぜこのような措置が取られたのか。これは万が一の襲撃や訪問先などをかく乱する狙いがあると推察される。

各国の訪問先の道路事情などにもよるが、アメリカ大統領は本国からビーストを2台持ち込み運用するのが基本。バイデン大統領訪日時のシーンだ(写真:有村拓真)
各国の訪問先の道路事情などにもよるが、アメリカ大統領は本国からビーストを2台持ち込み運用するのが基本。バイデン大統領訪日時のシーンだ(写真:有村拓真)
サバーバンは訪問先が不整地の多い地域やビーストでは入ることのできない場所がある際などに運用される。日本でも2022年5月に来日の際、訪問地の都合で一時的に大統領が乗車した。通常ならば国旗や大統領紋章を装着する(写真:有村拓真)
サバーバンは訪問先が不整地の多い地域やビーストでは入ることのできない場所がある際などに運用される。日本でも2022年5月に来日の際、訪問地の都合で一時的に大統領が乗車した。通常ならば国旗や大統領紋章を装着する(写真:有村拓真)

 バイデン大統領が乗車したような防弾仕様のランクルは世界中で活躍しているが、日本でも警察が防弾仕様のランクルを使用している。警視庁などには要人警護用のランクルが存在するほか、テロ対策の部隊である、機動隊の銃器対策部隊でも運用しており、その雄姿を見られた方もいるのではないだろうか。

こちらが警視庁の銃器対策部隊が運用するランドクルーザー。防弾性能を有する(写真:有村拓真)
こちらが警視庁の銃器対策部隊が運用するランドクルーザー。防弾性能を有する(写真:有村拓真)
警視庁警備部警護課の警護車。上の写真のランクルと違い、屋根には反転式警光灯を備える(写真:有村拓真)
警視庁警備部警護課の警護車。上の写真のランクルと違い、屋根には反転式警光灯を備える(写真:有村拓真)

 2月24日で侵略から1年を迎えた。ウクライナやロシアに平和が訪れる日を願ってやまない。

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