世紀の極秘訪問を支えた「乗り物」たち! 米バイデン大統領キーウ訪問の異例づくしドライブ

世紀の極秘訪問を支えた「乗り物」たち! 米バイデン大統領キーウ訪問の異例づくしドライブ

 2023年2月20日、ロシアによる一方的で無慈悲なウクライナ侵略から間もなく1年を迎えようとするこの日、アメリカのバイデン大統領が極秘にキーウ入りを果たし、ゼレンスキー大統領との会談に臨んだことは報道でご存じだろう。この歴史的な訪問の舞台裏では何が起きていたのか? 米国大統領の移動手段としてはすべてが異例中の異例で埋め尽くされた、これまでにはない移動方法をメインに紐解いていこう。

文/有村拓真、写真/有村拓真、ホワイトハウス公式Twitter、バイデン大統領公式Twitter、ゼレンスキー大統領公式Twitter

極秘裏にワシントンD.C.を出発

今回のキーウ電撃訪問でバイデン大統領がワシントンD.C.からポーランドまで搭乗したC-32A。通常の大統領専用機はボーイング747をベースとしたVC-25だが、C-32Aはボーイング757がベース。写真は横田基地に飛来した際のC-32A。B747のVC-25同様、美しい塗装が特徴的だ。日中は非常に目立つ(写真:有村拓真)
今回のキーウ電撃訪問でバイデン大統領がワシントンD.C.からポーランドまで搭乗したC-32A。通常の大統領専用機はボーイング747をベースとしたVC-25だが、C-32Aはボーイング757がベース。写真は横田基地に飛来した際のC-32A。B747のVC-25同様、美しい塗装が特徴的だ。日中は非常に目立つ(写真:有村拓真)

 バイデン大統領は18日の夜にジル夫人とワシントンD.C.のレストランで食事を楽しんだ後、普段通りホワイトハウスのレジデンスへ戻った。ところが19日の早朝、極秘の行動が幕を開けたのである。元々は翌日にポーランド訪問が公式発表されていた。

 現地時間午前3時30分頃、ホワイトハウスから数台の車列が出発した。通常、基地へ向かう際はヘリを使用するが、今回は周囲に悟られないようにあえて車列で移動した。

 専用リムジンを使用せず、また、交通規制の実施もしない車列はアンドルーズ空軍基地をひっそりと目指したのである。極秘でホワイトハウスを抜け出し、基地へと向かった事例としては、2003年のブッシュジュニア元大統領がイラクを電撃訪問した際にも同じ手法が取られたことがあった。

 ワシントンD.C.郊外にあるアンドルーズ空軍基地にはボーイング757、C-32Aの要人用航空機が静かにバイデン大統領らの搭乗を待っていた。基本的に大統領はボーイング747、VC-25の大統領専用機に搭乗することが多いが、今回は極秘行動のため、副大統領など閣僚が利用するこの機体が使用されたのである。現地時間午前4時15分、大統領を乗せたエアフォースワン(機体にかかわらず、大統領搭乗機は「エアフォースワン」となる)は静かにワシントンD.C.を飛び立った。

訪問先の空港でボーイング747が着陸できないなどの理由を除き、基本的に大統領はこのB747をベースとした大統領専用機VC-25に搭乗する。世界で一番有名な「エアフォースワン」だ(写真:有村拓真)
訪問先の空港でボーイング747が着陸できないなどの理由を除き、基本的に大統領はこのB747をベースとした大統領専用機VC-25に搭乗する。世界で一番有名な「エアフォースワン」だ(写真:有村拓真)

 同行者はシークレットサービスの警護官をはじめ、大統領補佐官などの一部上級スタッフのみ。同行記者についても映像と写真撮影の2名のみで、エアフォースワン搭乗後に情報漏洩防止の観点から携帯電話は一時的に没収されたという。

 エアフォースワンはドイツのラムシュタイン米空軍基地に給油のため着陸し現地時間19日18時30分頃に出発、同日20時頃にウクライナ国境に近いポーランドのジェシュフ国際空港に到着した。

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