名車シルビア、かつてはそのうねりの強いスタイリングから「ハマグリ」の愛称で親しまれていた日産を代表するスポーツカーだ。今回は、何故シルビアは後世まで愛されるクルマとなったのか? 駆動方式で分かれた明暗を皆さんと一緒に見ていこうと思う。
文/西川昇吾、写真/NISSAN
【画像ギャラリー】シルビアが辿った数奇な運命とは? 名車シルビアの画像はこちらから!!(30枚)画像ギャラリー■世はバブル!デートカーでイケイケな時代!
人気の絶版スポーツカーであるシルビア。特にS13~S15世代はトップクラスの支持を集めている。その理由がコンパクトなボディサイズのFRターボ…というパッケージなのだが、実はシルビアがFRという駆動方式を採用したのは仕方なく…な面もあったのだ。
5代目となるS13シルビアが登場したのは1988年のことだ。当時の日本と言えばバブルでイケイケな時代。そんな時代に流行ったクルマと言えばデートカーだ。日産は当時の若者受けするスタイリッシュでオシャレなクーペとしてS13を開発し、世に送り出した。
今となってはすっかり走り屋人気のクルマ、そんな走りのイメージが強いシルビアかもしれないが、登場当時のコンセプトやマーケティングの方向性は軟派路線のクルマだったのだ。
そんなシルビアのライバルと言えば、プレリュードやセリカといったFFクーペたちであった。デートカーと聞くとFRのソアラを思い出す人も多いと思うが、ソアラは価格帯的にも上級モデルであったため、シルビアとガチンコのライバルとしてはFFクーペたちが妥当と言える。
■カッコ重視でFR、黄金期を支えた走り屋御用達のクルマ
そんなクルマたちをライバルとなる訳だから、走行性能も大切だが、それよりもデザイン性の高さと装備の豪華さの方が重要となる。そのためS13開発当初は室内空間を広く取れるFFを検討していたという話もある。
しかし、当時の日産にFFプラットホームが無かったこと、そして低いフロントノーズを実現するためにFRレイアウトを採用することとなった。走りという理由よりもカッコよさを優先するという軟派な理由でFRとなった。
しかし、リアサスペンションには新開発のマルチリンクサスペンションを採用するなど、走りにこだわった部分も見受けられる。
蓋を開けてみたらそのデザインが高評価を得てヒットとなった訳だが、同クラスのライバルにはないFRレイアウトを採用したことにより、走り屋たちにも受けたのだ。
FFだったらデザイン性の高さで当時はヒットしたかもしれないが、現在のように中古車市場で高く評価されるということはなかっただろう。
■走り屋意識のS15、FRレイアウトが生んだ華麗なるフィナーレ
その後、シルビアはS14、S15と進化していく。S14になるとボディサイズが大きくなり、エンジンもパワーアップ。また途中から大型のリアスポイラーが選べるようになるなど、デートカーというよりもスポーツ色の強い変更を受けるようになる。
S15になると、エンジンパワーアップやブレーキのバージョンアップの採用など走りに関する部分が進化したのは当然だが、他にもフロントピラーにブースト計を配置したりするなど(NA車は油圧計)目に見えてスポーツ色、というよりも走り屋を意識した装備になっていった。
S13でデートカーとしてデビューした訳だが、S14、S15と進化していく過程の中で、市場でのニーズを受けて走り屋モデルへと進化した印象を受けるのが面白いポイントだ。
現在、最後のシルビアとなってしまったS15であるが、そのS15のコンセプトはS13でFRレイアウトを採用したが故に、走り屋御用達マシンとなった。そんな背景が生んだ偶然の産物のように思える。
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