【名門パルサーはなぜ復活しないのか】日産が小さくて安くて速いクルマを作らない事情

■なぜ日本に「パルサー」を導入しなかったのか?

 その理由は、「日本では小さなハッチバックに需要がない」と日産が考えたからだ。

 ここ日本で、小さくて安くて速いクルマが「魅力」だったのは、残念ながら過去の話だ。現在の日本では「大きくて安くて安心できるクルマ」でないと売れない。当時のファンも年齢を重ねていくうちに、「クルマへ求める魅力」は変わっていった。「小ささと速さ」よりも、家族が幸せな顔をして、皆が安心して快適に移動ができる、「大きくて安心」なミニバンなどを選ぶようになったのだろう。

 1990年代は「速く走る=楽しい」という定義が正しいと受け止められたが、現代では「友達や仲間と一緒に過ごす=楽しい」という価値観のほうが、大勢を決めているように感じる。

 少なくとも、自動車メーカーはその流れを感じ取り、ミニバンやコンパクトワゴンを量産し、販売台数を伸ばしてきた。

 往年のクルマ好きや、走り系ジャーナリストやメディアがこぞって言う「楽しいクルマ」は、定義が偏っていると感じる。

「小さくて速いスポーツカーは乗れば楽しさが分かる」のかも知れないが、現代の価値観に即した「メリット」が欠落しているため、その「楽しいはずのクルマが売れない」という時代となっているのだ。

■まとめ

 時代に即した「楽しいクルマ」と、クルマ好きが望む「楽しいクルマ」とのつながりを、自動車メーカーや我々メディアが一丸となって見いだすことができないかぎり、当時のパルサーのような「小さくて安くて速い」クルマは、残念ながら復活することはないだろう。

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