『頭文字D』伝説のクルママンガ 名勝負列伝04 AE86対ランエボIV編

『頭文字D』伝説のクルママンガ 名勝負列伝04 AE86対ランエボIV編

 クルママンガの金字塔、『頭文字D』の名勝負を振り返る本連載の4回目、今回は、拓海のハチロクが当時の最新マシンであったランエボIV(4)とバトルを繰り広げるストーリー。「こりゃ勝てない」、「絶対に勝てないな」、と読者に思わせておいて……結果、どうなったのか? ハチロクとハイパー4WDとの熱戦を紹介していこう(第8巻 Vol.86「ハイテクVS.スーパーテクニック」~第9巻Vol.93「赤城山決戦」より)。
文:安藤修也 マンガ:しげの秀一

■連載第1回 激闘の「vs.RX-7(FD3S)編」はこちら
■連載第2回 ハンデ戦「vs.シビック(EG6)編」はこち
■連載第3回 至高の存在「vs.RX-7(FC3D)編」はこちら

【名勝負登場車種】

■先行:トヨタ・スプリンタートレノ(AE86型)
→ドライバーは藤原拓海。高橋涼介に勝利した後、初アウェイとなる碓氷峠へ乗り込んでシルエイティも撃破。ホームじゃなくても速いことを証明したが、本人は当然、自覚なし。今回のバトル前に洗車をして清々しい顔をするシーンは拓海ファン必見! 超可愛い。

■後追い:三菱・ランサーエボリューションIV
→ドライバーは岩城清次。ランエボだけで構成されるチーム「エンペラー」のナンバー2。愛車を見て「ゾクゾクするほどキレイだ」と絶賛するのは、まわりから見るとキモいが、クルマ好きならその気持ちわからなくもない。ただ、「FR小僧どもをいじめてやろうぜ」などと、FRに親を殺されたのかのような、こじらせ発言を日常的に放っている。

【バトルまでのあらすじ】

 成長を続ける拓海は、碓氷峠でシルエイティに勝ち、妙義山でもS14シルビアとの雨のダウンヒルバトルを制した。だが、妙義のバトル後に、コースへ乱入してS14をブチ抜いたランエボⅣがいた。拓海が「息苦しいくらいの存在感」を感じたこのランエボは、その後も群馬県勢に対して類稀なる戦闘力を見せつける。そして、誰もが「ハチロクの勝率はゼロパーセント」と考えるハイパーマシンが、ついに秋名へ乗り込んできた!

【バトル考察】

 連戦連勝を重ねてきた拓海が、「ついに負けるのか」と思わせるストーリー展開。というのも、このバトルの前に、中里毅のGT-Rが完敗したり、拓海の父親の文太が、拓海に大事なことは「負けること」と発言したりと、読んでいるこちらもすっかり「今度こそ負けるのかー」と思わせられてしまう、しげの先生の罠が随所に貼られているからだ。

 アウェイ2連戦を終えた拓海は、エンペラーの存在を耳にして、「バトルしてみたい」と発言する一方、特に作戦があるわけではなく、「いつもの走り方しかできない」とも語っている。この、ちょっとハチロクの戦闘力に物足りなさを感じてきた雰囲気が、このバトル以降のストーリー展開を匂わせている。

 スタートは、「エンペラー」が好むという、エンジンパワーの低いほうが好きなタイミングでスタートするハンディキャップ方式を採用。言うなれば、エンペラーは相手を舐めているということ。ちなみに、スタート前にエンペラーナンバーワンの須藤京一が「シミュレーション3でいけ」と清次にアドバイスしているが、最後までこの作戦は遂行されず。「シミュレーション3」っていったい何? と気になったのは筆者だけじゃないはずだ(笑)。

 ハチロクを先行させ、後方から余裕で追うランエボ。序盤はこの展開が続くが、だんだん清次の心から余裕がなくなっていく様子が描かれている。「気にいらねぇ」→「ムカついてしかたないぜ」→「なんでオレはここまでイラついてんだぁ」と、やがてイラつき度はマックスに。

 なお、スタート後に京一が、「ドラテクは一流でも、清次はアタマが悪い」と(心の声で)発言している。オイお前ら友達だろ、ひどいぞ!(笑)

 そしてついに、秋名の最も長いストレートで、ランエボがハチロクを抜き去る。ギリギリのハイスピードでコーナーへ進入し、曲がりにくい4WD車を、思いきりのいい荷重移動とアクセル全開で無理やり手なづける清次。「WRCでも使われている」(清次談)という自画自賛の4WDドリフトで、ハチロクをはるか後方へ突き放したと思いきや、なんとハチロクは引き離されない!

 そしてここで、清次が自分のイライラの原因に気づくのだ、「自分のほうがコーナーでわずかに遅い」と。ここまで長いこと清次目線で追われてきたバトルだったが、やっと拓海のターン。表情と心の声「は…やい。やっぱ速い。すげー速いクルマだ」が見られる。どうやら主人公はまだ弱気だ(笑)。

 そしてコース終盤の秋名名物「5連ヘアピン」。

 ハチロクの「気持ちわるいぐらいめちゃくちゃにコーナリングが速い!」、「できの悪い特撮シーンみてる見たいな違和感。ほとんど悪夢だぜ」(ギャラリーの声)という走りで、その差がみるみる縮まっていく。そして、これまでのバトルでなぜ繰り出されなかったのは気にしちゃいけない、必殺技「ミゾ落としパート2」が炸裂!

 これは従来の “ツッコミ重視の”ミゾ落としではなく、“立ち上がり重視の”ミゾ落としのことで、バトル中、中学2年生の萌え拓海が、父親の文太からヒントを聞くエピソードが描かれる。そして、回想が終わると同時にハチロクはランエボの後方へピタリとつける。次のコーナー入り口でハチロクが横に並びながらインに入った瞬間、勝負はついていた。

 強大なライバル、ランエボもついに陥落。もうこれこそ本当にマンガの醍醐味!実際の世界でも、当時はランエボとインプレッサWRXが国産スポーツモデルのなかではアタマ一つ抜け出した存在になりつつあって、いよいよ『頭文字D』にも登場か、と読者たちも期待の眼差しを向けていたはず。さらに、バトル前からあれだけ「勝てない」と思わせておいて、中盤からの怒涛の展開。もうドキドキが止まりません!

 当時最強のランエボIVを打ち負かしたことで、果たして次はどんな相手が出てくるのか? そして、包み隠すように描かれていた、文太によるハチロク改良計画も気になる! 新たな伏線が張られたことで、読者は『頭文字D』の新展開から目が離せなくなるのである。

次ページは : ■【1話丸ごと掲載】(第86話)

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