『頭文字D』名勝負列伝08 超名車の同車種バトルと恋の行方 RX-7対RX-7編


【バトル考察】

 今回のコースは、かなり荒れた峠道だ。幅は2台がやっと並べる程度の狭さで、アスファルトは波打っている。バンピーな路面は、闘争心全開のアクセルワークが身上の啓介にはハマらない。案の定、スタートしてすぐに啓介がつぶやく、「っかしーな…、いっぱいいっぱいじゃねーか…!?」と。

 啓介向きじゃないとわかっていながらこのコースを選んだのは、プロジェクトDリーダーの高橋涼介にも狙いがあってのこと。曰く、「路面の状態が悪いのでトラクションがかかりにくい…アクセルワークのトレーニングにはかっこうのステージなんだ」。アクセル開度を、現在5段階だとしたら、10段階くらいまで増やしてコントロールする技を、啓介に身に付けさせようというのが、涼介の目論見だった。

 一方、恭子は絶好調だ。啓介の前を走りながら、「峠を攻めていてこんなに充実した気分になれたことない…」「ただ見てほしいだけ…」「今だけはあの人の意識を独占してる!! それだけであたし幸せ!!」と。男と女が逆の立場なら、ちょっと不純な感じだが(笑)、とりあえず可愛いから許す。いいぞ、もっとやれーッ!

 それにしても、FDの美しさ、である。国産車史上最高のデザインに選ぶ人も多いFDが2台で絡みあう姿、しげの先生の圧倒的な画力がその魅力をさらに高めている。ファンならずとも、眺めているだけでうっとりする。バトル中、ギャラリーがFDの美しさを語らうシーンまである。「芸術品みたいな曲線のボディ」「あれほどキレイで存在感あって、おまけに峠にはえるクルマは他には絶対ないよ!」と。その後、数ページに渡ってさまざまな角度からFDの走る姿が描かれ、セリフはなく、ただ効果音のみのシーンが続く。FD同士のバトルだからこそ成り立つ描写である。

 啓介は前述のとおり、走りながら学んでいく。シングルタービンの特性に気付き、高度なアクセルワークを修得する。まさにこのバトルは、啓介が成長するための必要なエッセンスを含んでいた。これらに元から啓介が持つ攻撃的で強い精神力がプラスされた時、もはや恭子に啓介を止めるすべはなかった。コース終盤のタイトなヘアピンで、ついに恭子のFDをとらえる。最終的には1段階レベルアップして、風格的なものまで備えた啓介であった。

 恋愛模様を織り交ぜた今回のバトルはとても異色である。バトル終盤、2人のランデブー中に、ドライバーと車とがシンクロするシーンがある。現実と虚構の狭間が曖昧になり、「楽しいよ、終わりたくない」と、恭子は恋という無敵のドラッグに酔いしれる。バトルのことだけ考えている啓介でさえ、「不思議な居心地の良さはなんだろう」と、陶酔感に浸っている。男臭いバトルが続いてきた(今後も続く)この作品において、このファンタジーなバトルは、その世界観に深みを与えている。

 バトル後のラブコメシーンは、急にほほえましくなり、それはそれで好感が持てる。ちなみに、その後に行われたダウンヒルは、あっとういう間に拓海のハチロクがぶっちぎって、勝負がつきましたとさ(笑)。

■【バトル丸ごと掲載】(第244~246話)

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