マジで日本の[クルマ]業界どうなる!? 日本の[クルマ]業界に降る恐怖とは

マジで日本の[クルマ]業界どうなる!? 日本の[クルマ]業界に降る恐怖とは

 2024年のアメリカ大統領選挙を制して大統領に返り咲くことが決定したドナルド・トランプ。トランプ復活は世界中に大きな影響を及ぼすはずだが、日本のクルマ界も例外ではない。中西孝樹氏、国沢光宏氏の分析、意見を紹介する。

※本稿は2024年11月のものです
文:中西孝樹(自動車業界アナリスト)、国沢光宏/写真:テスラ、マツダ、AdobeStock(トップ画像=lazyllama@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年12月26日号

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伝統的自動車メーカーにある恐怖のシナリオ

米国販売台数に占める輸入車台数と構成比 ※カナダを除く(2024/3期実績)作成:中西孝樹氏
米国販売台数に占める輸入車台数と構成比 ※カナダを除く(2024/3期実績)作成:中西孝樹氏

 「もしトラ」が「またトラ」で決着した。日本の自動車産業にとって悪夢に近く憂鬱な4年間を過ごすことになりそうだ。トランプ政権による国内自動車産業への影響を、1.通商政策(関税)、2.環境政策、3.自動運転、AI(人工知能)などの規制緩和、という3つの側面から検証する。

 関税は米国への輸入製品に一律10%、さらに中国に60%、メキシコへは25%の高関税を賦課することを検討している。選挙戦に入ってからはトランプ氏の発言が一段と過激化、演説で「最も美しい言葉は関税」とまで豪語している。

 関税の影響は3つに分けで整理すべきだ。まず「普遍的基本関税」として米国への輸入製品に一律10%かける関税賦課に対しては、米国生産比率を引き上げていくことで対応しなければならない。

 付加価値の高い製品を中心に日本から輸出しており、10%の関税で日本の競争力がそがれるものではないと考える。

 また、新しい法律を成立させることが必要であり、関税賦課には時間を要する公算も高い。

 中国からの輸入品関税60%は、中国から輸入されているアイテムのサプライチェーンの組み直しが必要となり、生産の受け皿としてアジアや日本に好機が来ると一般的に認識されている。自動車産業においては、中国からの完成車と部品の対米貿易は小規模であるため、影響は限定的となる。

 最大の懸念材料は、不法移民問題にメキシコが向き合わない場合に、段階的に実施しようとする25%の高関税である。

 中国とメキシコへの追加関税は、大統領が既存の法律(通商法301条や232条)に則ってすぐに発動できる。完成車生産の米国移管とサプライチェーンの組み直しの双方に取り組まなければならず、収益インパクトも多大となるだろう。

 米国市場における日本車メーカーの北米生産率は80%と高いが、メキシコを除けば64%に落ちる。日本からは年間142万台、メキシコからは75万台もの大規模な車両、部品を両国から対米輸出している。

 米国販売に占める米国・カナダ以外を原産地とする車両(いわゆる日本とメキシコ製)の比率は日本車合計で38%、マツダ、三菱自動車は100%、日産、SUBARUは40%以上を占める。

 米国販売台数に占めるメキシコ輸入車の比率は日本車合計で13%に過ぎないが、日産、マツダは30%に相当する。コスト競争力を奪われ、優位に立つテスラ、米国メーカーや韓国勢にシェアを奪われかねない重大な危機といえる。

(TEXT/中西孝樹)

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関税以上に怖い「マスク主導の規制緩和」

テスラは二足歩行型ロボット「オプティマス」を開発中。ロケットやAI、そしてロボットと、テスラはEVの先を見据えている
テスラは二足歩行型ロボット「オプティマス」を開発中。ロケットやAI、そしてロボットと、テスラはEVの先を見据えている

 環境政策においては、「パリ協定」から再離脱し、バイデン政権のインフレ抑制法(IRA)の廃止、EV補助金制度の撤廃などを目指す。

 自らが破壊した北米自由貿易協定の受け皿となった、北米における特恵関税(無税)貿易を一定条件下で認める「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の見直しにも取り組む考えである。

 環境規制の変更に関しては、日本車メーカーにはプラスとマイナスの両面が存在する。バイデン政権が固めた連邦車両排ガス規制(連邦GHG規制)の見直しは間違いがないだろう。ハイブリッド車に強みを持つ日本車は、CO2を削減するGHG規制には有利な立場にある。

 マイナスはカリフォルニア州が進める新乗用車規制のACCIIにある。ここでは一定数量のEVとPHEVを販売せねばならない。公約どおりにEVへの税控除が減額されるならますます売りづらく、巨額な規制対応費用の支出や販売台数減少に見舞われかねない。

 筆者が最も注視するのが、自動運転、AI(人工知能)、ロボット、ロケットなどテスラがリードする領域におけるトランプの規制緩和である。

 イーロン・マスクの関心はもはやEVの大量販売にはない。優先順位はスペースXのロケットであり、自動運転技術のFSD、ヒト型ロボットのオプティマス、大規模言語モデルのGrokの普及にある。

 天才的経営者がEVの先にあるデータとAIの覇権を握ろうとして最大権力者(独裁者)に影響力を及ぼすのはガバナンス的に健全なことではない。

 近未来にテスラのソフトウェアやFSDがウィンドウズのような業界標準になった時、箱に過ぎないEVの覇権の意味は薄れてしまう。そんなものは中国メーカーが米国内で組み立ててもいいのである。これは伝統的自動車メーカーにはホラーである。

 関税以上に規制緩和が怖いシナリオではないかと筆者は感じる。トヨタやホンダは関税を乗り越え競争力を持続できるだろう。しかし、規制緩和がテスラや中国メーカーを含めた新勢力を台頭させると、トヨタやホンダですら窮地に陥ることになる。

(TEXT/中西孝樹)

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