一瞬で受注停止…ジムニーノマド人気の理由と「こだわり」の一端

一瞬で受注停止…ジムニーノマド人気の理由と「こだわり」の一端

 「受注開始からわずか4日で5万台超」という驚異的なスタートを切り、早くも2025年のベストヒットカー候補と目されるスズキ新型「ジムニーノマド」。現在は一時受注停止となっているが、再開を待つファンは少なくないのではないだろうか。

 「5ドア版のジムニーシエラ」といわれていたジムニーノマドだが、実際に登場してみると、単なるシエラの5ドア化にとどまらず、さらなる進化を遂げたモデルであることが明らかになった。ジムニーノマドに込められたスズキの「こだわり」について掘り下げよう。

文:吉川賢一/写真:SUZUKI

【画像ギャラリー】単に5ドア化しただけじゃなかった!! スズキの「こだわり」が各所に込められている新型「ジムニーノマド」(18枚)画像ギャラリー

車両コンセプトを突きつめることから始まった

 スズキが公開している開発者インタビューによると、新型ジムニーノマドの開発は、ジムニーを指名買いするプロユーザーたちの意見を直接聞きに行くことから始めたそう。国内の森林組合や欧州のプロハンターたちのもとを訪ね、彼らのリアルなニーズを吸い上げることで開発の方針を固めようと考えたのだ。

 そこで得たのは、「狭い道の先のコーナーを曲がる際に死角が生じないようAピラーは立ててほしい」「狭い場所での転回を容易にするため、ボディは角張った見切りの良い形状が望ましい」といった、現場での実用性を重視した要求だった。

 ジムニーシリーズに関しては、かねてより5ドア化を望む声が強かったが、乗用車に振ってしまうと、本格4WDとしての特性が薄れてしまうことが懸念される。判断が難しい中、ユーザーの声を直接聞くことで、ジムニーシリーズが持つ「高い悪路走破性を備えた本格4WD」という原点を改めて見つめ直すことができたのだ。

スズキ新型「ジムニーノマド」。なんとジムニーを指名買いするプロユーザーたちの意見を直接聞きに行くことから、開発を始めたという
スズキ新型「ジムニーノマド」。なんとジムニーを指名買いするプロユーザーたちの意見を直接聞きに行くことから、開発を始めたという
ジムニーノマドも、「悪路走破性の高い本格4WD」がコンセプト。アプローチアングル、デパーチャーアングルはそのままに、高い車高を確保して、ランプブレークオーバーアングルへの影響も最小限に抑えた
ジムニーノマドも、「悪路走破性の高い本格4WD」がコンセプト。アプローチアングル、デパーチャーアングルはそのままに、高い車高を確保して、ランプブレークオーバーアングルへの影響も最小限に抑えた

丸型ヘッドランプは「手に入れやすさ」で採用

 また、ジムニーシリーズのアイコニックなデザイン要素のである丸型ヘッドランプにも、スズキならではのこだわりがあるという。

 現行ジムニー/ジムニーシエラ(JB64/JB74)から採用されている丸型ヘッドランプだが、丸型を採用する理由はなんと「代替品が入手しやすい」から。ヘッドランプとウィンカーのパーツを分けているのも、パーツの入手しやすさ、補修のしやすさを考えてのことだという。

 ジムニーシリーズはいまや、世界199の国と地域で販売されているグローバルカーだ。荒れ地や砂漠、密林を走るジムニーにとって、接触や横転のリスクは避けられない。部品の入手しやすさと交換のしやすさはジムニーにとって重要な要素であり、ジムニー、ジムニーシエラ、ジムニーノマドが同じヘッドランプを共有し、さらに汎用品への交換も可能になっているのには、ユーザーの利便性を最優先に考えたスズキならではのこだわりがあったのだ。

丸目のヘッドライトには、僻地での部品入手性を考えての設定だった
丸目のヘッドライトには、僻地での部品入手性を考えての設定だった

悪路走破性と後席快適性のバランス

 また、「悪路走破性と後席快適性のバランス」にもかなりこだわったそうだ。「優れた悪路走破性」を諦めるわけにはいかないが、5ドア化に伴い後席空間を確保するにはホイールベースを伸ばす必要があり、そうすると車両サイズが大きくなってしまい、小回り性能などが犠牲となってしまう。そのため、後輪位置を極力変えずに開口部を拡げる設計を何度も検討したという。

 具体的には、Bピラーを前方へ移動し、フロントドア長を短縮。さらに後席乗員のヒップポジションを50mmほど後退かつ20mmほど上昇させることで、膝の角度を緩和し、快適性を向上させた。同時に、モモ裏のサポートを強化するためにシートクッションも長くした。

 後席に関してはまた、乗降性の向上にもこだわり、後席シートクッションの角部を斜めにカットすることで、靴の踵部分が引っかからないように工夫。開口幅は30mmを確保し、後席ドアの下側にあるトリムパーツもカットすることで、乗り降りの際に足がスムーズに通るようにしたという。サイドシル高さも可能な限り下げたそうだ。

 最終的にホイールベースは340mm延長され、2,590mmに設定。ホイールベースを伸ばすと車両のピッチング(前後の揺れ)が抑えられるので、オンロードでの乗り心地や直進安定性が向上するというメリットも生まれた。現行ジムニー/ジムニーシエラの完成度が高いだけに、このバランスを取るための設計判断は非常に難しかったという。

ジムニー/ジムニーシエラに対し、後席乗員のカップルディスタンスを90mm拡げ、後席乗員がくっついて乗っていたのを、余裕をもって座れるように改良した
ジムニー/ジムニーシエラに対し、後席乗員のカップルディスタンスを90mm拡げ、後席乗員がくっついて乗っていたのを、余裕をもって座れるように改良した
後席乗降性を確保するため、Bピラーを前方へ移動し、フロントドア長を短縮。さらにリアドアの下側にあるトリムパーツをカットして、乗り降りの際につま先が通過できるように工夫している
後席乗降性を確保するため、Bピラーを前方へ移動し、フロントドア長を短縮。さらにリアドアの下側にあるトリムパーツをカットして、乗り降りの際につま先が通過できるように工夫している

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