レーシングカークオリティを市販車で味わえる歓び
加えて、1989年の全日本プロトタイプカー(グループC)耐久選手権をポルシェ962Cで戦い、そのデビュー戦で優勝。そしてすぐル・マン24時間に遠征した。そこで得たポルシェ962Cとロードカーである911の関係深さに感心させられる。
エンジンの空冷シリンダーブロックやピストン、コンロッド、クランク、モトロニックのインジェクションシステムなどが911と962Cは共通で、ドライブフィーリングもそっくりだった。
細かく言えば、ヘッドライトやワイパースイッチ、キーシリンダーも共通だ。ポルシェ962Cにはドアに鍵がついており、取り扱い説明書も備わる。部品番号の多くには964-911から始まる記号が表記され、市販車の964型911と多くのパーツを共有していることがわかったのだ。
そして962Cは3.2Lのエンジン排気量だったのである。つまり3.3のシリンダーと共通だった。962Cは当時でも1億円以上するレースマシン。911は高いと言っても1000万円で買える。そう思うと911がお買い得と思えてきたから不思議だ。
それまではカローラサイズの911がなぜ1000万円もするのか、納得がいかず、高価な911に魅力を感じなかったが、レーシングポルシェでレースを戦い、911の価値を正しく理解することができた、というわけだ。
964型911ターボ・リミテッドには10万km近く乗った。その間、レース会場のサーキットやベストモータリングのロケ会場にもこの911ターボで出かけた。
レーサーはポルシェでサーキットに駆けつける、という子供の頃に抱いた憧れの姿を、長きに渡り実践できたのはレーサー冥利に尽きた。
2019年。東日本大震災や様々な災害を身近に体験し、ポルシェに安全な場所で生き続けてもらいたいと願い、手放すことを決心した。その時、僕はプロのレーシングドライバーではなくなったのだと感じた。
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