ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の企画「日本のGT 世界のGT」から、世界に挑んだ日本のGTカーたち10番勝負をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:三本和彦、津々見友彦、石川真禧照、鈴木直也、竹平素信
■勝負1:それは“あまりに無謀な挑戦”だったのか!? 初代スカイラインGT-R vs ポルシェ911S(1969年)
●1960年代終盤の熱いバトル
みなさん、こんにちは。三本和彦です。今回は「ニッポンのGT対世界のGT特集」ということで、ほほう、最初の対決はハコスカGT-Rと初代ポルシェ911(901型)ですか。
あの当時、日産やトヨタ、いすゞといった日本のメーカーはどこもこの初代ポルシェ911を購入して持っていたけど、実際に乗ると「ああ、やっぱりドイツのスポーツカーってのは違うんだな」と思わせてくれたもんだよねえ。
例えばステアリングの追従性。ポルシェ911の場合、一度ステアリングを切ったらスッとそのまま車体が向きを変えていったけど、GT-Rの場合はステアリングを切ってもまたすぐに切り足さなければいけなかったのが気になってね。ボクが身をもって体験した時に「このクルマじゃあGT、ましてやスポーツカーなんて名乗っちゃいけないんじゃないかな」なんて思ったもんでしたよ。
そういう話を日産の開発陣にしたんだけど、「いや、三本さん、そういう考え方は違うんです。ポルシェ911はスポーツカー、ウチらのクルマはGT、つまりグランドツーリングカーで、長時間の移動を快適にするためのクルマなんです。ポルシェのようにステアリングを鋭敏にするのは欧州ではいいかもしれませんけど、GT-Rを売る日本ではそうはいかないんです。なんとかほめてくださいよ」と言われたもんでした(笑)。
エンジンパワーは両車ともに160psといったところでしたけど、2L水平対向6気筒のポルシェに対してGT-Rは直6の2Lを積んでいて、これは強力だったんだけどとにかく重くてねえ。乗り比べるとポルシェ911に比べて軽快さがなかった。エンジンが重いぶん、とにかく舵角を早く与えないと曲がってくれなかった。
そこでこれはなんとかならないのか、と開発陣に言ったんだけど、「三本さん、エンジンの種類がなかったからこれ(S20型DOHC)にしたんだけど、これじゃダメかねえ? それにしてもウチのクルマはどうしてこんなに重いんだろうねえ」なんて言われちゃってねえ(笑)。
ただ、意気込みはよかった。ふつうの4ドアセダン/2ドアHTに強力なエンジンを搭載して、ノーマルモデルよりも軽めのステアリングをつけて「俺たちが日本のGTを作るんだ!」という気概にあふれていた。今思えばいい時代だったね。
それとキャビンの居住空間の広さ。これはGT-Rだけのもので、スポーツカーのポルシェ911にはない大きな魅力でしたよ。GT-Rは値段も国産車のなかでは高かったほうとはいえ、ポルシェ911の半分以下だったから。
日本でGTの名を最初につけたのはベレットだったけど、それを広めた功績はやっぱりハコスカのほうだったんだろうねえ。それにベレGではやっぱりボディが小さかったからね。
●挑戦の結果…ポルシェ911が100点だとしたらスカイラインGT-Rは「75点」!!
(TEXT/三本和彦)
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