静岡県裾野市にあるウーブン・シティのフェーズ1が完成し、2025年2月の竣工式では施設の一部がメディアに公開された。豊田章男会長は「日本でもこんなことができるのを見せかった!」と語っているが、はたしてどんなものができたのか!?
※本稿は2025年3月のものです
文:ベストカー編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年4月10日号
2026年度から一般のお客様にも公開予定
2020年に豊田章男社長(当時)が構想を発表してから5年余り、ウーブン・シティのフェーズ1が2024年10月に完成し、2025年2月22日に竣工式が行われた。
延べ620日、340万時間、42万4000人をかけた大プロジェクトであり、前例がないこともあって、工事を行った大林組からは「こんなに難しい工事は初めてだ」と苦笑いされたというエピソードもあるほどだ。
2025年秋からトヨタ社員や関係者などの入居が始まるが、2026年度からは1日体験のようなカタチで見学できるようになるというからお楽しみに。
ウーブン・シティ(Woven City=編まれた街)にはさまざまな価値を織り込んでいくという思いが込められている。豊田佐吉が創業した豊田自動織機をルーツに持つトヨタ自動車ならではのネーミングともいえる。
ウーブン・シティをひと言で表すとヒト、モビリティ、インフラの3つを三位一体で考える「モビリティのテストコース」であり、社会課題の解決策を生み出す実証の街でもある。
今回公開された「Kakezan Invention Hub(掛け算・インベンション・ハブ)」は外壁が一面ガラスとなっていて、屋根は富士山の尾根を思わせるスロープ状になっている印象的な建物。中に入ると採光性に優れ、木を使った落ち着いた空間が広がる。
その名のとおり「掛け算による発明」を生み出す場所で、自動車産業以外の業界の強みを「掛け算」し、新しい価値やプロダクト、そしてサービスの創出が期待される。
ウーブン・シティはインベンターズ(新しい技術やプロダクトを発明する人たち)と住民やビジターであり、その技術やプロダクトを体験し、意見や感想を述べるウィーバーズ(編み手)で構成される。
「Kakezan Invention Hub」はインベンターズが発明したプロダクトが展示されウィーバーズと意見を交わす場所であり、プロダクトはあくまでも試作や仮説に基づいたもので、意見交換によって開発が加速することを狙っている。
未来のモビリティづくりに貢献する聖地にしたい
竣工式に出席した豊田章男会長はこう語った。
「かつてここにはトヨタ自動車東日本の東富士工場がありました。その閉鎖を決断した2018年、私は工場で働く仲間たちと直接対話をしました。
さまざまな事情で一緒に働くことができなくなる仲間たちへの想い、この地でクルマを作り続けてきた誇り、地域の方々への感謝、ひとりひとりがその胸の内を語ってくれました。
その顔を見て、その想いに触れて、私は『この場所を未来のモビリティづくりに貢献する聖地にしたい』、そう心に誓いました。
ウーブン・シティは更地の上にできたのではありません。半世紀にわたり、自動車産業のために働き続けた仲間の想いの上にできる街です。私の言葉で言うならば『クルマ屋たちの夢のあと』です。
あれから7年。私の想いは多くの人たちの手によって、現実のものになろうとしています(中略)。ウーブン・シティは進化し続ける『永遠に未完成の街』であり、『未来のモビリティのテストコース』です。
この場所から『ウーブン・シティがあってよかった』、みんながそう思えるような、未来のモビリティが生まれることを期待しております」。
想いのこもった挨拶だった。
また豊田章男会長は、「ウーブン・シティはコラボレーションがすべて。どんな商品やサービスが生まれてくるかワクワクしています」と語る。2025年秋からトヨタとさまざまな企業がコラボする実証がスタートする。
「日本でもこんなことができることを見せたかった!」。豊田章男会長の「こんなこと」とはウーブン・シティだけではなく、そこから生まれてくるものであるはず。
例に挙げてくれたのが、身体の不自由な方へのモビリティ。「介護用品のようなものではなく、使ってみたいと思わせるようなカッコいいモビリティがつくられるといいよね」。なるほどです。
いろいろな人がここで交流し、コラボすることで今までにないワクワクする商品を生み出そう! ウーブン・シティが生んだ商品が 世界を驚かせる日は遠くないはずだ。
コメント
コメントの使い方凄いなー。
こんな壮大な実験都市を作れるのはトヨタのみ。