2025年1月末日、全国トヨタ車両販売店代表者会議が開催された。メーカーと全国のディーラーの代表者約350名が一堂に会したなかで、豊田章男会長はディーラーの代表者たちに何を語り、どんな関係をつくろうとしているのか!?
※本稿は2025年2月のものです
文:ベストカー編集部/写真:トヨタ
初出:『ベストカー』2025年3月26日号
「トヨタがしっかりとしないといけない」……章男会長の言う「トヨタ」とは
「自動車産業が日本のど真ん中にあって、トヨタがしっかりとしないといけない」。豊田章男会長は我々メディアによくそう話す。
トヨタがしっかりすれば、サプライヤーはもちろん、自動車産業に働く550万人が、さらには日本が豊かになる。驕りではなく重い覚悟を口にしているのだ。
この「トヨタ」にはメーカーであるトヨタ自動車だけでなく、全国に展開するトヨタディーラーも含まれている。トヨタのディーラーはトヨタモビリティ東京以外、基本的に地場資本だ。そしてその多くが、トヨタ車だけを販売してきた。
ある時はメーカーがディーラーを支え、メーカーが苦境に陥った時はディーラーが結束し、クルマを販売し救ってきた。メーカーとディーラーは苦楽をともにしてきた関係だ。そのディーラーのトップは豊田章男会長と同じく3代目が多い。そのことを踏まえて代表者会議に登壇した豊田会長はこう呼びかけた。
「創業の時代にはお金も、技術も、何もありませんでした。しかし、『未来のために日本に自動車産業をおこす』という『夢』がありました。今我々はその大事な『夢』を忘れていないでしょうか?」
「私たちがともに見る『夢』は先代から託された自動車産業をさらに発展させ、人々を幸せにすることだと思います。
どんなに時代が変わろうとも自動車産業が日本のど真ん中にあり、未来を切り拓く原動力であり続けることです。そのためにはトヨタを未来に存続させなければなりません。それが『モビリティ・カンパニー』に変革する意味だと思うのです」
豊田章男会長がモビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジを掲げたのが2018年1月のことだ。世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する会社になると定義した。
そして、新しいサービスをお客様に提供するのはディーラーであることに変わりはない。つまり、資本関係のない数多くのディーラーが一緒に変わらなければ、未来は開けない。
これまで資本関係がなくてもトヨタ自動車とディーラーには深い人の絆があった。しかし、絆だけでは先の見えない未来を切り拓くことはできない。
メーカーが生きるか死ぬかの変革を必死に進めるなか、ディーラーはどうなのだ? 豊田章男会長はディーラーのトップたちに「覚悟」を求めたのだ。
ディーラーに求められるものは「モビリティの未来を一緒につくること」
そして、豊田章男会長はディーラーのトップを前にきっぱりとこう言い切った。
「恐れるべきは変化の波や時代ではなく、私たちが運よく受け継いだ地盤や、出来上がった仕組みにしがみつこうとする姿勢です」
厳しい言葉だ。メーカーとディーラーのトップ同士ではなく、同じ3代目同士として自戒を込めて語りかけたのだ。従属関係ではなく、対等な目線から放たれた言葉でもある。
トヨタ自動車に豊田喜一郎がいたように、各ディーラーにも創業者がいて、豊田喜一郎の『夢』に共感し、行動した。今では想像もできないような苦労をしたに違いない。3代目はそのことを忘れてはならない。加えて、今は変革の時だ。
「(ディーラーが)おじいちゃんの代からやっているというのは絶対のアドバンテージだと思います。3代にわたってトヨタ自動車とつきあってきているわけですから。
しかし、だからこそメーカーのことをもっと知ってメーカーと一緒にチャレンジしてほしい。ディーラーでもメーカーでも創業家だからこそできることがあると思います」。豊田章男会長は代表者会議が終わったあとそんな話もしていた。
今回の代表者会議では、トヨタ自動車は責任をもっていいクルマをつくり、しっかりと届けること。
そして、業務改善のためのプラットフォームを開発していくこと。ディーラーは、そのクルマをしっかり売ることはもちろん、お客様のためになることを考え積極的にサービスとして取り入れていくことを確認し合った。
メーカーとディーラーが両輪となって未来を変えていこう、メーカーだけではできないからこそ、覚悟をもって協力してほしい。
かくも強靭なトヨタ自動車とディーラーの関係こそがトヨタの強さの秘密だ。
「人生はニコニコ顔で命がけ」。
豊田章男会長は最後にそう結んだ。
コメント
コメントの使い方お行儀の悪い販売方法については触れられていないのでしょうね
会長としてメーカーには国内向け受注車の早期納車、ディーラーには不当な抱き合わせ販売の禁止を徹底しろよ!