今走っている道路に起きるかも知れない陥没事故。道路が陥没、または崩落する事故には、実にさまざまな要因がある。地盤災害ドクターの異名を持つ横山芳春氏が、道路の陥没・崩落の原因や、危機回避の方法などをアドバイスする。
※本稿は2025年3月のものです
文:横山芳春/写真:AdobeStock ほか(トップ画像=kapinon@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2025年4月10日号
最近では豪雨による道路陥没事故も多発

八潮市の事故以降、陥没事故が報道される機会も目立っており、2025年2月6日には愛知県名古屋市の水道管工事現場で砂が流出して路面の陥没が起き、乗用車の前輪がはまって動けなくなる事故や、同年2月12日には大阪府堺市で地下の水道管が相次いで破損、断水や道路の段差も見られた。
舗装道路の陥没には前兆がないことも多いが、路面のたわみ(下側に大きくくぼむ)、くぼ地状に集中したひび割れなどが発生することもある。交通量の多い道路などでは路面に日常的なひび割れは多数発生しており、陥没の前兆と見分けることは難しいだろう。
空洞化が進行している場合には、通行時にアスファルトが沈み込んだような感覚がある場合もある。すでに路面に穴が見えている場合などは、公道であれば道路緊急ダイヤル(#9910)からの通報、私有地であれば管理者等への連絡を行いたい。
道路の陥没の原因は道路の排水施設の破損や、地下の下水道管の老朽化になどの事例が多いが、大雨や地震によって陥没が起こることもある。普段どおり慣れている道でも、予期しない空洞・陥没が起こることがある。災害時の道路のリスクについて解説する。
豪雨後の陥没として、2024年9月4日に千葉県市原市の国道16号で、4車線にわたって道路全体が陥没する事故が発生した。道路を横断する銅製の雨水管の腐食と、先日に降った大雨で雨水管を流れる水や地下水の影響が想定される。
同じく2024年9月21日に能登半島で起きた奥能登豪雨では、川にかかる橋に流木が引っかかってふさいだ事例が各地で見られた。堰き止められてあふれた濁流がはん濫、石川県珠洲市では橋のたもとの道路が浸食されてできた陥没穴に乗用車が転落する事故も発生した。
このほか、豪雨時の道路通行で気を付けたいことは、冠水した道路に突入してしまう事例だ。
河川の洪水や近年多発するゲリラ豪雨時の「内水氾濫」では、線路や道路をくぐるアンダーパスのほか、周りよりくぼんでいる場所の冠水時には注意したい。冠水路では水深が判断しづらく、「行けるだろう」と突っ込んでしまうと、想像より深くなっている場合がある。
冠水時の水深がクルマの床面を超えると、電装系の故障によって走行不能になってしまう場合もある。実際に、冠水路では水深30cmほどで走行不能になっている乗用車を目撃した。
水深が深くなるとドアが開けづらくなり、車内から脱出できず死亡に至る事例も少なくない。冠水部には突入しないことと、万一に備えて脱出用ハンマーの常備をお勧めしたい。
●横山芳春……だいち災害リスク研究所・所長、地盤災害ドクター。関東平野の地形・地質のなりたちに関する論文で博士(理学)の学位を取得、早稲田大学理工学総合研究センター、国立研究開発法人産業技術総合研究所等での研究活動を経験。
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