2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故。要因は下水道管の破損と言われているが、道路が陥没、または崩落する要因はさまざまある。地盤災害ドクターの異名を持つ横山芳春氏が日本の道路の現状について考察する。
※本稿は2025年3月のものです
文:横山芳春/写真:毎日新聞社、AdobeStock ほか
初出:『ベストカー』2025年4月10日号
道路陥没事故は1日平均30件近く発生!?
2025年1月28日、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没が発生したことは記憶に新しい。道路上に空いた陥没穴に大型トラックが落下し、運転していた男性は3月末時点で未だに救助されていない。
当初は直径5m、深さ10mだった陥没穴は、軟弱な地盤の崩落や流入する水の影響などなどにより直径40m、深さ15mまで拡大した。
崩落を防ぐ地盤改良工事などにより周辺への拡大は止まったが、長期にわたる広域の下水道の利用制限や立ち入り、通行規制など周辺への影響も大きかった。今後の事態の収拾にも、まだ時間を要しそうだ。
八潮市で発生した陥没は、埼玉県東部の広範囲の下水を流す、複数の自治体にまたがった「流域下水道」の損傷によるものであった。
下水は勾配をつけて下流側にある下水処理場に流下させるが、流域自治体の終点部の処理場に近い場所であったことも深さ約15mの地中深くに大型の下水管が埋設されていた原因となり、周辺一帯の軟弱な地盤と併せて復旧が困難な原因となっている。
陥没の瞬間の動画を見ると、それまでは普通に車両が通行できたであろう交差点で、突如としてアスファルト舗装が落ち込んで、大きな空洞できているように見えた。
陥没の直前まで路面にはくぼみや大きなひび割れなどは見られず、特に目立った前兆は見られなかったようである。
下水管上部が腐食で穴が開いた後、軟弱な地盤の土砂が穴の中に流れ込み、急激に空洞化が進行、最後にアスファルト舗装が崩落した可能性も考えられる。
道路の陥没といえば、2016年11月8日の早朝に起きた福岡県博多駅前の陥没は非常に大規模であった。地下鉄延伸工事で地盤が崩落し、幅約27m、長さ約30m、深さ約15mの陥没が起きた。
このような大規模な陥没は稀で多くは小規模なものであるが、国交省によると2022年度の道路陥没は1万548件も発生したとされる。1日平均で30件近い数字となると、まったく他人事ではないだろう。
●横山芳春……だいち災害リスク研究所・所長、地盤災害ドクター。関東平野の地形・地質のなりたちに関する論文で博士(理学)の学位を取得、早稲田大学理工学総合研究センター、国立研究開発法人産業技術総合研究所等での研究活動を経験。
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