日本は昔から地震が多く、また近年では毎年のように水害が多発する。これらの災害で大きな被害を受けるのが道路や橋、トンネルなどの交通インフラだ。地盤災害ドクターの異名を持つ横山芳春氏が、もしもに備えたサバイバル術をレクチャーする。
※本稿は2025年3月のものです
文:横山芳春/写真:AdobeStock ほか(トップ画像=metamorworks@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2025年4月10日号
インフラの老朽化は深刻レベル
地震によって、地盤の液状化や土砂崩れ、地盤の崩落などで道路が陥没・損壊することがある。地盤の液状化が起こると、地下の砂と水が地面に噴き出して地盤の沈下や、地下の砂が流出することで陥没に至ることがある。
能登半島地震では、緩い斜面で地盤が流動してアスファルト舗装を押し出し、クルマが山型にせりあがった舗装の上に乗ってしまう事例や、ガレージが地面に沈み込んでクルマが潰される、泥水にクルマが埋まってしまう事例も見られた。
陥没にまで至らない場合でも、地震による地盤沈下や道路の被災で大きな段差ができ、クルマが通行できない、またバンパーや車体底部を擦りやすいこともある。
地震後から解体、復旧・復興が進む期間には、解体時に散乱した古い釘やネジなどが落下している場合もある。地震後には道路の段差や路面状況の悪さもあり、平常時よりパンクが起きやすい状態にある。スペアタイヤを含めタイヤの状況、空気圧チェックや、タイヤパンク応急修理キットの持参を怠らないようにしたい。
東京、大阪、名古屋を中心として、日本の大都市は海や川が運んで来たゆるい地盤の上に成り立っており、地震時には揺れや液状化で被害を受けやすい。さらに、地下の配管の多くは公道の直下を通っており、老朽化を原因とした陥没の多くは道路に影響を及ぼしやすい背景もある。
近代化に際しては高度成長期に張り巡らされた地下インフラができて50年以上を迎えている。一般的な耐用年数である50年を迎えつつあり、何もせずに将来的に使用できるものではない。
これは道路の下にある地下インフラだけでなく、高速道路、橋やトンネルなどにも共通する課題である。
今後どのようにインフラの更新や補修のうえ、維持管理をしていくかは、我々国民、また日々クルマに乗って道路を利用するドライバーには無縁なことではない。将来にわたってカーライフを楽しむにあたっても、道路をはじめとしたインフラにも関心を持っておきたい。
●横山芳春……だいち災害リスク研究所・所長、地盤災害ドクター。関東平野の地形・地質のなりたちに関する論文で博士(理学)の学位を取得、早稲田大学理工学総合研究センター、国立研究開発法人産業技術総合研究所等での研究活動を経験。
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