■片岡英明氏に聞いてみた
【編集部からのクエスチョン】VWup!のトータルランキングは22位とずいぶんと低いです。片岡さんは10位に入れていますが、そのあたり、どのように見られますか!?
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世界中で最も数多くのクルマが生産され、自動車メーカーが並々ならぬ力を注いでいるのがCセグメントの2BOXカーだ。最近は、このクラスもダウンサイジングが進んできた。排気量を1.5L以下とし、ターボなどの過給機を積んで燃費などのエコと高性能を両立させるクルマが増えてきている。
予想通り、トップになったのは走りがスポーティで、安全性能も世界トップレベルのボルボV40だ。リーズナブルな価格設定も魅力的と映る。2位はファミリーカーとして秀でたバランス感覚のゴルフTSIコンフォートラインだった。
そして3位にはスズキのスイフトスポーツが食い込んでいる。スイフトはRSも5位と大健闘だ。エンジニアがまじめに作ったクルマであることがよくわかる。ちなみに4位になったのは、ワインディングロードで気持ちいい走りを楽しめるプジョーの208GTiだ。
意外だったのは、鳴り物入りで登場したフォルクスワーゲンのup!だ。予想もしなかった22位となっている。運転してみるとクルマを操る楽しさはビンビン伝わってくるし、VWらしい質の高さも損なわれていない。
だが、マニュアルをベースとした2ペダルのシングルクラッチトランスミッションは、慣れてコツをつかまないとギクシャクする。MT車の楽しさを知っている人にはいいが、AT育ちだと違和感があり、乗りづらいと感じるだろう。また、ウィンドウの開閉なども戸惑うなど、使い勝手はいま一歩。これが足を引っ張って下位に沈んだ。
■渡辺陽一郎氏に聞いてみた

【編集部からのクエスチョン】スイフトRSを4位にしています。これはゴルフやボルボV40よりは低いですが、ベンツA180やプジョー208GTiよりも高い順位です。その理由を教えて下さい。
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スイフトRSは1.2Lのノーマルエンジンを搭載する。1~3位に挙げたゴルフ、V40、ポロなどに比べて動力性能は低く、後席の居住性や装備も見劣りする。
その代わりスイフトRSでなければ味わえない個性がある。RS専用の足まわりと1tを下まわる車両重量で、操舵感はとても軽快。後輪の接地性を相応に保ったうえで、車両の向きを変えやすい。アクセル操作によるコントロール性を含め、運転の楽しさを実感できる。
しかもバランスのよさを備えたうえ、スイフトスポーツほど旋回性能は高くない。さまざまなユーザーが、自分の運転技量に応じてスポーティに走れる。
エンジンも同様だ。5速MT仕様を選べば、さほど速度を高めずに性能をフルに引き出せる。表現を変えれば、動力性能の高いエンジンならシフトダウンの必要を感じない場面でも1.2Lでは力不足に陥ることが多い。
つまりスイフトRSでは、高回転域まで引っ張ってシフトアップしたり、ヒール&トゥでシフトダウンする作業が、「ムダな遊び」ではなく「速く走らせるために必要なテクニック」になる。少し非力だった昔のスポーティハッチバックに通じる運転感覚だ。
それでも走行安定性は現代のクルマらしく底上げされ、車両の動きは素直だから、ベテランドライバーはもちろん初心者にも適する。運転を正しく覚えて上達するための教材にはピッタリだ。
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このカテゴリー、欧州車が多くなるのだが、そのなかでもスイフトスポーツ&スイフトRSの健闘が目立った。100万円台という価格も魅力的だ!
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)

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