今やセダンカテゴリーを更新しているのは、トヨタとホンダくらい。ただ、両社が展開するセダンは、一昔前と比べるとかなり大型化した印象を受け、今の日本では「コンパクトセダン」を探すのが難しい。しかし今から四半世紀遡ると、2000年代の初頭には小さなセダンが結構あった。今こそ復活の時な気がする、コンパクトカーベースのセダンに注目していきたい。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】まだまだ終わっちゃいかんよセダンの時代!!(13枚)画像ギャラリーヴィッツのセダン? リッターカーセダンの王道プラッツ
1999年に登場したトヨタのプラッツ。当時のヴィッツとシャシーを共有する、コンパクトセダンだ。ヴィッツにトランクを足したエクステリアは、尻上がりで可愛らしくもあった。
ボディサイズは全長4,145mm×全幅1,660mm×全高1,500mmで、ホイールベースは2,370mm。こんな小さなボディでも、トランクを含めないキャビンの大きさは結構あって、室内長1,855mm×室内幅1,380mm×室内高1,265mmだ。
エンジンは1.0Lと1.5LをFFに、1.3Lを4WDに用意した。車両重量は1トンを切るものだから、1.0Lでも結構しっかり走る。燃費が良いのに爽快な走り心地は、コンパクトカーらしからぬ部分があり、リーズナブルな車両価格もあってヒットの予感は十分にあった。
21世紀へお先にというキャッチコピーを引っ提げ、未来的な雰囲気を持たせたものの、日本での人気はいまひとつで終わってしまう。ただ、輸出市場では健闘したクルマでもある。
小さなセダンも高級に! プラッツの血を引くベルタ
プラッツの後継モデルとして2005年に登場したベルタ。2代目ヴィッツをベースにしているのだが、ホイールベースの延長や低重心のスタイルなど、独自の設計でちょっと高級感も醸し出している。
1.5Lは廃止され、1.0Lと1.3Lエンジンを搭載。ベルタ(イタリア語で美しい人)という車名の通り、プラッツよりも整えられたエクステリアが魅力的だ。2006年にはグッドデザイン賞を受賞している。
こちらもクルマのデキは良かったものの、ユーザーの若返りまでは果たせず、セダン下火の中で消えゆく運命に。海外ではヤリスセダンの名で結構人気だったから、日本という市場が小さなセダンを受け入れなかったということだろう。
フィットのセダンもあったのだよ
2002年にホンダが送り出したのが、フィットアリアだ。フィット同様にセンタータンクレイアウトを採用し、室内は想像よりも広い。エクステリアはコンパクトカーフィットに似ているのだが、意外と共用部品は少なく独自のデザインを細部まで調整していた。
ホンダにとってはシビックの大型化以降、貴重な5ナンバーセダンだったが、こちらもプラッツ・ベルタ同様に、パッとした成果は残せなかった一台だ。
セダン復権には小さなとこからコツコツと
これらの小さなセダンたちは、空前のミニバンブームに沸く日本市場の中で、人気の安定していたコンパクトカーたちの勢いにあやかってセダン復権を狙ったのだろうか。結果的に個人需要はあまり伸びず、法人の社用車として数多く導入されていたイメージだ。
一時の流行というよりは、メーカーが「セダンやりたいけど日本の皆さんどうですか?」と聞くために生まれてきたクルマだろう。これを若者向けではなく、年齢の高いユーザー層に聞いてしまったので、上手く成果が出なかったと筆者は考える。
同じことを今やってみてはどうか。GRモデルも大成功しているヤリスや、根強い人気のフィットをベースにして、若者へ向けたデザインと価格で勝負できるセダンを作ったら、市場の旗色も変わる気がするのだが。
悲しいかな、この原稿を書いている最中に、トヨタがアクシオとフィールダーの生産を2025年10月末で終了すると発表した。これで今秋には国内から5ナンバーセダンが消える。
もう小さなセダンは必要ないのだろうか。いや、潜在需要はあると思う。プラッツ・ベルタのようなクルマを今一度、日本で売ってほしい。とびっきりカッコよく、とびっきり小さいセダンなら、食いつく若者は結構多いはず。5ナンバーセダンよ、まだ息絶えるには早いぞ。

















コメント
コメントの使い方ごく少数しか売れないから利益にならない、開発費が回収できないので、精々が東南アジア向けセダンの逆輸入や流用に頼るしか有りませんね。
ホンダ・グレイスは社内で設計費用の賠償問題になるほどで、もうホンダにセダンを販売する体力は無い。