タイヤの歴史を紐解く!! 中身は超絶進化しているけど今も黒くて丸いままなのはなぜ?

タイヤの歴史を紐解く!! 中身は超絶進化しているけど今も黒くて丸いままなのはなぜ?

 空気入りタイヤの誕生は1888年。自転車向けに使われたのが始まりで、それ以降、クルマに使用する中で金属や化学繊維で補強するなど進化してきた。しかし、今日に至るまでゴム製の黒くて丸い物という概念に大きな変化はない。その不変の理由を紹介する。

文:デグナー12(Team Gori)/写真:写真AC

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ゴムに勝るタイヤの素材はない

ゴムの木からとれる樹液がゴムの原料。カーボンブラックやシリカなどの化学物質を添加することで強度を高めてタイヤの材料に使用する
ゴムの木からとれる樹液がゴムの原料。カーボンブラックやシリカなどの化学物質を添加することで強度を高めてタイヤの材料に使用する

 タイヤの素材として必要不可欠なゴム。ゴム以外の素材が試されたこともあるが、ゴムには衝撃をやわらげる伸縮性、空気や水を通しにくい性質、摩擦が大きく滑りにくい性質がある。これらの性質はタイヤには最適で、ゴム以上に優れた素材がないことが今日まで使われ続ける理由だろう。

 また、タイヤが黒い理由はゴムの強度や耐摩耗性を向上させるために混合されるカーボンブラックによる影響。近年では燃費性能やウェット性能を向上させるために、二酸化ケイ素を原料としたシリカを多く使うようになっている。シリカは透明に近い白色であるため、カーボンブラックの代替素材にすることで赤や白など、カラータイヤの製造も可能。

 しかし、シリカの配合には高度な技術が必要。何より黒以外の色は汚れが目立つ上に、クルマのボディカラーの相性などもあり、カラータイヤの普及は難しい。そういう意味ではカーボンブラックの必要性はまだ高く、今後も黒いタイヤの時代が続くだろう。

チューブからチューブレスへ、バイアスからラジアルへ構造は大きく進化

タイヤとホイールが接触する部分の断面図。金属ワイヤーや化学繊維が骨格を形成している様子がみてとれる
タイヤとホイールが接触する部分の断面図。金属ワイヤーや化学繊維が骨格を形成している様子がみてとれる

 一方、中身の構造は時代を経て進化しており、その1つがチューブレスタイヤの普及。それまではタイヤとホイールの間に空気を保持するチューブを入れていたが、その後はタイヤの内側にチューブに代わるゴムシートを付けて空気漏れを防ぐチューブレスタイヤに進化。パンクしても一気に空気が抜けにくくなり、発熱性も低くなったことで安全性が向上した。

 2つ目の進化はラジアルタイヤの普及。ラジアルとはタイヤの骨格であるカーカスを放射線状に配置し、ベルトで補強した構造のことを指す。それまで主流だったバイアスタイヤはカーカスを斜めに配置した構造。バイアスは悪路の乗り心地がいい反面、剛性はラジアルの方が高い。タイヤのラジアル化は操縦安定性、耐摩耗性、燃費性能の向上につながった。

エアーレス時代も見えてきた次世代タイヤの進化

タイヤにとって空気は不可欠だったが、空気を必要としないタイヤの実用化もそう遠くない
タイヤにとって空気は不可欠だったが、空気を必要としないタイヤの実用化もそう遠くない

 タイヤにとって空気は必要不可欠な存在で、空気が抜けてしまうとタイヤとしての機能を果たせなくなるリスクがある。パンクして空気が抜けても走行可能なランフラットタイヤもあるが、使用距離に限界があり、通常使用では空気が必要であることには変わりない。

 そこで、次世代タイヤとして各メーカーが開発を進めているのが空気を必要としないエアーレスタイヤ。その先駆けとなったのが月面探査機に装着されたタイヤだろう。気温差が大きく、宇宙線が降り注ぐ過酷な月面環境にも耐えるように素材は全て金属素材。エアーレスタイヤの実用化はまだ先だが、空気の補充が不要になる日も近いかもしれない。

 また、石油外天然資源を活用したタイヤも登場。乗用車用タイヤの場合、石油などの化石由来資源が原材料の6割ほどを占めている。しかし、昨今のSDGsへの配慮から植物油や植物性繊維など天然素材の活用が進んでおり、中には100%石油外天然資源化を達成したタイヤも登場。タイヤの見た目は変わりようがない中でも中身の技術は日進月歩ということだ。

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