昨今のクルマには、フロントタイヤの前に、黒いベロのようなものが装備されていることがあります。泥除けのマットガードとは位置が違うこの黒いベロ、いったいどんな役割をもつものなのでしょうか。
文:吉川賢一/写真:NISSAN、TOYOTA
【画像ギャラリー】これって何のため!?? 黒いベロがある日産「ノート」/「ノートオーラ」(22枚)画像ギャラリー黒いベロの正体は「タイヤディフレクター」
この「黒いベロ」の正体は、タイヤ周辺の気流を整えることで燃費を改善する「タイヤディフレクター」です。
走行中、クルマには正面から空気があたりますが、フロント部分に当たったあと、空気はボディ表面に沿ってボンネットからルーフへ流れていったり、ボディサイドへ流れたり、フロア下へ流れたりしながら、車両後方で合流します。タイヤディフレクターは、このうちのフロア下に流れた空気を整流するもので、回転するフロントタイヤに直接空気があたることで大きな空気抵抗となることを防ぐ(空気抵抗を低減する)役割を果たしています。
クルマの形状(セダン、SUV、ミニバンなど)やタイヤの幅などによって気流の大きさや方向は変わってくるため、黒いベロの長さや幅もクルマごとに異なります。また、僅かな車高の違いによってもディフレクターの効果が変わってくるため、設計時の車高管理は非常に重要だそう。空力シミュレーションによってサイズや位置を検討し、巨大な風洞試験機などで効果検証をしたうえで採用されており、雨や雪、飛び石などがあたっても割れにくく破損しにくい、柔らかい樹脂やゴムなどで出来ています。
バンパーサイドの「穴」も、空気抵抗低減アイテムであることも!??
タイヤ周りの空気抵抗低減アイテムとしてはほかにも、「エアカーテン」とよばれるものも、近年乗用車においてよく採用されています。
タイヤは走行中絶えず回転を続けるため、ボディサイドの気流の流れに影響を与え、空気抵抗の一部となってしまいます。できることならばホイールハウスに蓋をしてしまいたいのですが(初代インサイトの後輪カバーのように)、蓋の代わりに、走行風の向きをコントロールしてタイヤに空気のカーテンをつくってしまおう、というのがエアカーテンです。
たとえば、日産「セレナ」のエアカーテンは、フロントバンパーの左右両端に開けられたエアインテークから空気を取り込み、隙間を通して、フロントタイヤのホイールアーチ前側へ放出する構造です。フロントバンパーのデザインに溶け込ませていますので、露骨なエアロパーツの主張はなく、セレナでは燃費性能向上に加えて、ミドルクラスミニバン共通の弱点である直進安定性の改善にも、大きく効果があったそうです。ちなみに同じミニバンである新型「アルファード」にも似たような造形がありますが、こちらは無貫通です。
また、タイヤ周りではないですが、トヨタ車のドアミラーの付け根やリアコンビランプなどでよくみる突起のようなもの(ボルテックスジェネレーター、トヨタでは「エアロスタビライジングフィン」とよぶ)も、空気抵抗低減や直進性向上が期待できるアイテムです。


























コメント
コメントの使い方こんなことバラしたら、カッコツケたがりのお馬鹿さんに車高調やエアロパーツが売れなくなるじゃないか!
これ、豪雪地帯だと雪解けと同時にどっかいってるんだよね
MH22のワゴンRみたいに
カナードが空力でなくタイヤ横の整流目的なのは有名ですが、フロントバンパー端の造型も、貫通していなくても前タイヤハウス内やその周囲の整流効果がありますよ。
穴開いてないと意味ないじゃん!と思いがちですし、勿論風洞実験しっかりした上でなら開いててて効果的なのですが
穴は空気抵抗になりますし、造型やカナードで対応できれば軽量かつ衝撃吸収にも有利です。開いてりゃいいってもんじゃないことを是非知って下さい。