今年も梅雨がやってきます。首都高速道路株式会社によると、雨天時は晴天時よりも約5倍も事故が多くなり、その多くがスリップによる事故だそう。
雨天時には、速度を落とし、慎重な運転を心がけるということももちろん大切なのですが、スリップしないためには適切なタイヤを装備しておくことも重要。雨の日に怖くないタイヤの選び方と調べ方についてご紹介します。
文:吉川賢一、立花義人/アイキャッチ画像:Adobe Stock_Moopingz/写真:Adobe Stock、写真AC、JATMA
【画像ギャラリー】タイヤの溝の見方、知ってる? 雨の日に怖くないタイヤの選び方と調べ方(8枚)画像ギャラリー濡れた路面での性能が変わり始めるのは残り溝3~4mm
雨の日にも安心して走るために、まず気にするべきはタイヤの摩耗度合いです。雨天時は、タイヤに刻まれている溝によって、路面の水が溝から排出され、タイヤが路面にしっかりとグリップできるようになりますが、摩耗によって溝の深さが減ってしまうと、排出できる水の量が減ってしまうため、水が邪魔をしてタイヤが路面にグリップできず、スリップしてしまうリスクが高まるからです。
タイヤの摩耗度合いは、「ウェアインジケーター」(スリップサイン)を目安にします。タイヤ側面には、△マークや記号などの目印が記されていますが、その延長線上のタイヤの溝の底にある盛り上がった部分がウェアインジケーター。
タイヤは走行することで路面と接する部分が摩耗していくため、ウェアインジケーターと路面と接する部分の高さの差は、どんどん縮まっていきます。ウェアインジケーターと路面と接する部分の高さが同じになったときが、道路交通法で使用が禁止されている「溝の深さ1.6mm」の状態であり、タイヤの使用限界。ただ、この状態はすでにタイヤのウェット性能がかなり落ちている状態であり、雨の日にスリップしてしまう危険性がかなり高くなっています。
タイヤメーカーのブリヂストンによると、時速80kmでハイドロプレーニング現象(濡れた路面で高速走行をした際に、タイヤと路面の間の水によってタイヤが浮き上がってしまい、クルマが制御不能になる現象のこと)のテストをした際、残り溝7.5mmの新品タイヤでは、一部水膜に浮いている部分があったものの、ほとんどの部分は路面にしっかりと接地していたのが、約50%摩耗したタイヤ(残り溝3.2mm)ではかなりの部分が水膜の上に浮き、タイヤの使用限界となる残り溝1.6mmでは、ほとんど路面に接地できていなかったそう。
ブリヂストンは、「(ブリヂストン調べでは)ユーザーの約4割が残り溝3〜4mmで交換をしており、このタイミングでの交換は理想的」としています。もちろん残り溝1.6mmに達するまでは使うことができますが、雨の日も安心して走行するためには、このくらいのタイミングで交換しておくのがベストなのかもしれませんね。

主溝が太く多いタイヤは排水性能が高い
タイヤの濡れた路面での性能(ウェット性能)は、タイヤの溝のパターン(トレッドパターン)によっても変わってきます。
一般的に、タイヤの主溝(タイヤの周方向に沿って走る大きな溝)が太く、かつ本数が多いタイヤは、排水性能が高く、ハイドロプレーニング現象を抑制する効果が高いです。タイヤが接地する面の水を素早くかき出すことで、タイヤと路面の密着性を維持しやすくなるためです。
また、サイプ(タイヤの表面に刻まれた細かい切れ込み)が多いタイヤも、濡れた路面に対するグリップ力が高い傾向がありますが、サイプは多くなるほどドライ性能(乾いた路面での性能)を損なうことになるため、適度に入っていることが望ましいです。
また、タイヤを組んだときの内側と外側の指定があるタイヤ(非対称パターンのタイヤ)や回転方向の指定のあるタイヤ(方向性パターンのあるタイヤ)は、タイヤメーカーが、直進時やコーナリング時にどのようにタイヤがグリップして欲しいかを考えて設計されているタイヤであるため、雨天時の排水性、コーナリング性能、操縦安定性など、タイヤが最大限のパフォーマンスを発揮するように設計されているタイヤだといえます。
タイヤのローテーションに位置縛りが出たり、タイヤの組み替え時には注意が必要となりますが、こうしたタイヤトレッド面に込められたテクノロジーを見て、ウェット性能を考えてみるのもいいでしょう。










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