■なぜ交換する必要があるのか? 無関心が大事故につながることも
なぜ交換しなくてはいけないのか。ゴムが柔軟性を失って、スリップしやすくなったり、バーストしやすくなるからです。
そんな大げさな、と思われるかもしれませんが、じつはそんなに大げさな話ではありません。数年前に、ディーラーに展示してあったスポーツカーでドライブするイベントがあって、案内役として参加したことがありました。この時、見事にそのスポーツカーが路面に埋めこまれたキャッツアイを踏んでバーストしてしまったのです。
クルマ(新車)がディーラーに来てから2年半。その間ほとんど展示のみで走らせていませんでした。
タイヤを見た時、深いヒビがたくさん入っているので嫌な予感はしていたのですが、参加した方がトンッとキャッツアイを踏んだ瞬間、バスっとサイドウオールが割れてバーストしてしまいました。
そう、タイヤは走ると摩耗しますが、走らないとゴムの劣化が進んでしまうのです。
■タイヤは走っても走らなくても劣化する生ものだと知ろう
タイヤは柔軟性を保つためにオイルが練り込まれています。このオイルが、時間が経つごとに抜けて少なくなってしまい、その結果タイヤがカサカサになって柔軟性がなくなっていってしまうのです。
それに加えて、ゴムは時間経過とともに再架橋というのが起こります。少し詳しく説明すると、タイヤを作る最終過程で、ゴムに硫黄を混ぜて熱を加えます。加硫工程というのですが、それによってゴムは分子同士が結びつきを強くします。これを架橋と言います。架橋によって、ゴムは飛躍的に柔軟性と弾性を高め、タイヤとしての耐久性を高めます。
実際には、モールドと呼ばれる釜の中で、内側から圧力を加えながら150度前後の熱を加えてタイヤの形を成形します。蛇足ですが、このモールドに刻まれた模様がタイヤのトレッドパターンになります。この工程を経ることで、タイヤは皆さんが知っているタイヤの性能を得ることができるわけです。
ただ、それで終わりではなくゴムの分子同士が結びつき、ゴムの弾性を高める働きをする架橋は、製造が終わってもゆっくりしたスピードで起こっているのです。これを再架橋と言います。
再架橋が進むとゴムの分子同士の結びつきが強くなりすぎて、こんどは柔軟性が失われていってしまいます。こうなるとウエットグリップ性能が悪くなってしまいます。もちろんウエットグリップだけでなくドライグリップも落ちているのですが、ドライ路面での性能低下はわかりにくいのです。
わかりやすいのは雨です。ゴムの柔軟性が失われると、粘るように(柔軟に)路面にコンタクトする性能が落ちるので、ある程度の力がかかると唐突にツツーッと滑り出したります。そんな状況になる前から、性能劣化の症状は感じられます。
雨の日に走っていると、不安定な感じがするとか、レーンチェンジでクルマの動きがぴくぴくする感じになったとか、タイヤの柔軟性が少なくなってくると、しっとりした感触とか、懐の深い寛容な感じというのが薄れていってしまうのです。何となく走りにくいとか不安感があるというのは、実はそんな症状をそれと意識することなく感じているからなのです。
というわけで、購入してからある程度年数が経過したタイヤは摩耗してなくても交換することが好ましいわけです。目安はサイドウオールやブロックの根元に深めのひび割れが入ってきたら。先に4年前後と書きましたが、極端に走行していないクルマのタイヤの劣化は早く進みますので、注意が必要です。
タイヤの消費期限に気を付けてもらいたいが、ほかにも注意してもらいたいのが「タイヤの空気圧」だ。特に冬季は路面温度が低いため、タイヤが温まりにくく内圧が上がらない。
各車両で指定されている適正空気圧よりも大きく低下している場合、高速走行時に異常発熱を起こして、バーストを起こす危険性がある。バーストが駆動輪で発生したりすると、最悪の場合は制御を失い、他車を巻き込む大事故にもつながりかねない。
少なくとも、月に1度の空気圧チェックを習慣にすることが大切だ。
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