街中で見かけるクルマのフロントマスクが「怒り顔」に見えると感じたことはないだろうか。多くのメーカーが採用するこのデザインには、心理学的な理由とデザイン戦略が隠されている。その背景を探ってみよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、Adobe Stockなど
【画像ギャラリー】最近のクルマ、サメじゃなきゃ基本は怒ってる!? 過去には笑い顔や眠い顔のクルマもあったんだゾ!(14枚)画像ギャラリー怒り顔デザインの心理学的背景
人間は、視覚的なパターンから顔を認識する傾向がある。この現象は「パレイドリア」と呼ばれ、例えば壁の染みや雲の形が人の顔に見えることがある。また、「シミュラクラ現象」として、三つの点が逆三角形に配置されると顔に見えることも知られている。これらの現象は、人間が進化の過程で敵意や感情を素早く察知するために発達した能力とされている。
特に「怒り」の表情は、他の感情よりも迅速に認識される。心理学ではこれを「怒りの優位性効果」と呼び、怒った顔は視覚的に目立ちやすいとされている。このため、クルマのフロントデザインにおいても、怒り顔が採用されることで視認性が高まり、他の車両や歩行者に対して存在感を示す効果が期待されている。
デザイン戦略としての怒り顔
自動車メーカーは、クルマの個性やブランドイメージを表現する手段として、フロントマスクのデザインに力を入れている。怒り顔のデザインは、スポーティさや力強さを強調するために効果的であり、特にコンパクトカーやSUVなどで多く採用されている。
例えば、トヨタの5代目RAV4やヤリス、日産のスカイライン、スズキのスイフトスポーツなどが挙げられる。これらのモデルは、フロントグリルやヘッドライトの配置によって、攻撃的で精悍な印象を与えている。このようなデザインは、消費者の視線を引きつけ、ブランドの存在感を高める狙いがある。
さらに怒り顔のデザインは、安全性の向上にも寄与する可能性がある。視認性が高まることで、他のドライバーや歩行者に対して車両の存在を強調し、事故のリスクを低減する効果が期待されている。
クルマの怒り顔デザインは、単なる流行や見た目の好みだけでなく、人間の心理や進化の過程、そしてブランド戦略や安全性向上といった多角的な要素が絡み合っている。次に街中で怒り顔のクルマを見かけたら、その背後にある深い理由に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
















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