大きすぎるしいろいろ「雑」で……アメリカ車が日本で売れない理由

大きすぎるしいろいろ「雑」で……アメリカ車が日本で売れない理由

 「日本ではクルマ(アメリカ車)が全然売れない」と、米国の大統領が不満を漏らしています。実際、日本では、テスラ以外のアメリカ車を見かけることは多くはありません。

 米国大統領は「日本の自動車安全基準などが原因だ」としていますが、安全基準の違いがその理由ではないことは多くの人が感じているはず。ではなぜアメリカ車は日本で売れないのでしょうか。理由を考えてみましょう。

文:吉川賢一/アイキャッチ画像:/写真:GM、STELLANTIS、TESLA

【画像ギャラリー】アメリカ車が売れない日本で売れているアメリカ車、テスラのモデルラインアップ(21枚)画像ギャラリー

日本では「輸入車」といえば欧州車

 日本人が「輸入車」と聞いて真っ先にイメージするのは、メルセデスベンツやBMW、フォルクスワーゲンといった欧州の自動車メーカーでしょう。実際に街中を走る輸入車の多くが欧州車です。

 この肌感は統計データにも表れており、JAIA(日本自動車輸入組合)が発表している2024年に国内で販売された輸入乗用車約22万台のうち、もっとも売れたのはメルセデスベンツ(52,761台、シェア23.1%)のクルマで、次いでBMW(36,551台、シェア16.0%)、3位フォルクスワーゲン(25,653台、11.2%)。この上位3メーカーでシェア50%を占めています。

 アメリカ車は8位のJEEP(9,721台、シェア4.19%)が最高位で、シボレー(23位)はわずか497台、キャデラック(25位)は468台、フォード(31位)は186台と、確かに販売苦戦している状況。もっとも売れているであろうテスラは、日本市場での販売台数を非公表にしているためわかりませんが、それでも「日本ではアメリカ車が売れない」という状況にさほど変化はないものと思われます。

JEEPらしさに溢れたSUVである「ラングラー」。その最上級グレード「アンリミテッドルビコン」は、車両本体価格は889万円~
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シボレージャパンが正規販売している「コルベット」。車両本体価格は1420万円~。コルベット史上初の右ハンドル仕様が用意されたことで話題となった
シボレージャパンが正規販売している「コルベット」。車両本体価格は1420万円~。コルベット史上初の右ハンドル仕様が用意されたことで話題となった

ボディがデカい、燃費が悪い、というのももちろんあるが…

 日本でアメリカ車が売れない理由としては、「ボディがデカい」「エンジンが大きくて燃費が悪い」「価格が高過ぎる」などが指摘されています。

 全幅2メートル近い大型SUVや、排気量3リッターオーバーのスポーツカー、安くても500万円は超える価格など、ちょっと前まではそうしたアメリカ車が多く、いまもJEEPのラングラーやグランドチェロキー、シボレーはコルベット、キャデラックはエスカレードなど、米国メーカーが誇るフラグシップ級のクルマが日本市場でラインアップされています。

 しかしながら、昨今は、JEEPでいえば「レネゲード」(税込455万円~)や「コンパス」(税込479万円~)などの小型SUVが日本にも投入されていますし、キャデラックも「XT4」(税込790万円~)というミドルクラスSUVを用意するなど、日本の需要にマッチするようなモデルも投入されています。燃費性能に関しては、レネゲードが14.3km/L、コンパスが11.8km/L(どちらもWLTCモード)と、よいとはいえませんが、価格に関しては(高級車メーカーであるキャデラックはさておき)欧州車と比較して遜色はありません。

 アメリカ車が日本で売れないのは、米国のメーカー自身が「アメリカ車らしさ」を前面に押し出し、それを好む一部のファン層に向けて、あえてそうしたモデルを中心に展開してきたという「戦略」が影響している面があるのではないでしょうか。

 これにはもちろん、「日本車にはない大きなボディ」「大排気量による怒涛の加速感」「派手なエクステリア」をアメリカ車の魅力としてきたメディアにも原因があると思いますが、かつてコンパクトで価格の安いアメリカ車(サターンやネオン)が投入された際、品質面で日本車に及ばなかった(はっきりいえば品質が悪かった)経験から、コンパクトで性能がいい、コスパが求められるクルマでは日本車に敵わないと米国のメーカー自身が判断し、アメリカ車らしさが前面に出るモデルを強調する戦略をとったことで、日本市場においてアメリカ車が「一部のファンだけが買うクルマ」になってしまっているのだと筆者は思うのです。

JEEP「レネゲード」。1.3リッターガソリン車を日本で販売中。価格は455万円と、JEEPにしてはリーズナブルだ
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キャデラックのミドルサイズSUV「XT4」。税込790万円~と、キャデラックジャパンのラインアップの中ではもっとも安価
キャデラックのミドルサイズSUV「XT4」。税込790万円~と、キャデラックジャパンのラインアップの中ではもっとも安価

次ページは : 日本で売るためには、米国メーカー自身が戦略を変える必要があるのでは

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