今年もやってきた突然の豪雨シーズンが到来する。街が水に沈むとき、ドライバーは何をするべきなのか? 都市部の冠水、タイヤの限界、そして意外なトラックとの比較まで。水に強いクルマと運転テクニックの「本当の意味」を知れば、雨の日が怖くなくなる。
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ドライバーが気をつけるべき豪雨のなかでの運転テクニック(6枚)画像ギャラリーワイパーに頼るのは控えるべし
今年の梅雨は例年になく早く明けた。しかし梅雨が終わったからといって、降雨が終わったわけではないことを忘れてはいけない。むしろ、これからはいわゆるゲリラ豪雨など大雨の本番である。
突発的なゲリラ豪雨、台風の接近、局地的な線状降水帯が近年は全国各地を襲う。都市部に張り巡らされたアスファルトは、激しい雨水を十分に排水できず、瞬く間に水が溢れる。
その時、クルマを走らせている我々はどう備え、どう対処すべきか。雨天時におけるドライビングのノウハウを、ここで再確認しておきたい。
多くのドライバーは、雨の日の視界確保をワイパー性能にゆだねがちだ。しかし、それだけでは十分と言えない。ワイパーが払う視野は限定的であり、夜間やトンネル付近では光の反射やギラつきで視界が遮られることもある。
ワイパー自体も強い紫外線の影響でゴムの劣化が早まっており、近年では3年も持たない。また低コスト化の影響を受け、フロントガラスの質も低下している車種があり、ワイパー作動で傷がついて夜間の雨天ではギラつきが酷いものもある。
そこで重要なのは日頃のメンテナンスだ。撥水剤を塗布し、水を弾くこと。ガラス表面の埃や汚れをこま目に清掃し綺麗に保つことが重要だ。ワイパーゴムの劣化やブレードの定期的な交換、ウォッシャー液の補充など日頃から気をつけておきたい。
ちなみに・マン24時間レースを走ったグループCなどのレースカーで降雨に遭った場合、高速でのワイパーの浮き上がりを防止するエアロブレード、ピットイン時にメカニックが脱脂剤で汚れを拭き上げるかフロントガラス(アクリルだが)の保護幕を剥がして綺麗な面を露出させる。
高速走行時は撥水性に任せワイパーをあえて使用しない、フロントガラスの曇りによる視界低下を防ぐ電熱デフォッガーを備えるなど、とにかく視界の確保は重要課題だった。
これがフォーミュラカーであればワイパーはなく、ヘルメットのシールドに何層もの捨てバイザーをつけてレース中に1枚ずつ剥がして視界を確保していた。現代のF1でもその原始的手法が引き継がれているのは驚きだ。そろそろ画期的な視界確保の素材が開発されてもいいと思うのだが。
知らぬ間に低下しているタイヤの空気圧
雨天時の操作ミスは、すべて「急のつく運転操作」に集約されると言っても過言ではない。なぜなら、ウェット路面ではタイヤのグリップ限界が大幅に低下するからだ。路面が濡れているだけならミューの低下として単純に速度を落とせばグリップの回復点を見つけられるだろう。
しかし大雨で路面に水が溢れた状況だと速度を落とすことすら難しくなる。速度を落とすのは通常ブレーキを操作することだが、ブレーキ力を路面に伝えるタイヤがグリップ力を発揮できていなければ、ブレーキを踏んだ瞬間にタイヤがロックしてしまい速度はなかなか低下しない。
特に路面水量の多い状態だとハイドロプレーン(アクアプレイニングとも言う)状態になり、ブレーキ力も操舵力も伝わらない。ハイドロプレーン現象は、V(ハイドロが起きる速度)=63√P(タイヤ空気圧)で導かれる。
例えばタイヤ空気圧が2.0kgf /平方センチメートルだとすると、V=63×1.14=71.82km/hとなる。つまり高速道路でも71km /h以下で走っていればハイドロは絶対に発生しないのだが、ミューは相応に低くなっているので、速度には注意が必要だ。
レースではより低い空気圧を使うのでハイドロが発生しやすい。そのためにタイヤに特別なグルーブを施した大雨専用タイヤを装着し、水深の浅いラインを優先して走らなければならない。
時にウエットではアウト・アウト・アウトといったラインが取られるが、これはコーナーのカントの上部は水捌けがよく、濡れているだけの路面状態であることが多いからだ。
一般的にウェット路面のミューは0.4~0.6と言われ、乾燥路面と比べて濡れたアスファルトでは制動距離が約1.5倍から2倍に延びる。ハイドロが起こればミューは限りなく0に近くなってしまうので、一刻も早く速度を落とし、ミューを回復させなければならない。









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