なぜ追い越し車線に居座り続けるのか? 日本人だけ? ドライバーの心理と対処法

なぜ追い越し車線に居座り続けるのか? 日本人だけ? ドライバーの心理と対処法

 お盆の時期だけでなく、休みの日になるとよく見かける、高速道路の追い越し車線を居座り続けるクルマ。その背景には思い込みやルールの誤解、運転支援システムの影響まで複数の要因があります。本稿では通行帯違反の法的リスク、安全に穏便に解決する実践手順まで、深堀りします。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、写真AC(トビラ写真)

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追い越し車線に居座り続けるドライバーの心理

新東名120kmh区間。追い越し車線に居座り続ける軽自動車(takadahirohito@Adobe Stock)
新東名120kmh区間。追い越し車線に居座り続ける軽自動車(takadahirohito@Adobe Stock)

 なぜ追い越し車線に居座り続けるのでしょうか? 後ろからクルマが来ているのに、最高速度を守っているから自分は正しいと思っているのでしょうか? 居座り続ける理由について考えてみました。

1:「自分は速い」という思い込み

 右側=速いクルマのレーンという固定観念から、「自分は流れに乗っている」「制限速度付近だから問題ない」と判断し、追い越しが終わっても戻らないケースが多いです。

 実際の交通流は刻々と変化し、後続のさらに速い車が接近する場面も少なくありません。右車線は“通行車線”ではなく“追い越すための車線”であることを忘れがちです。追い越し車線を走り続けると車両通行帯違反になる点を理解していないのでしょう。

2:車線変更が面倒くさい? 忘れている?

 ミラー確認→目視→ウインカー→ステアリング操作という一連の手順を面倒と感じ、「空いているからこのままでいいや」と右に滞留してしまう心理。加えて長距離ドライブによる注意力低下も、戻り忘れを招きます。

3:ルールの誤解、“追越=右、常時走行もOK”という誤読

 道路交通法では、追い越しは原則“右側から行い、終わったら速やかに走行車線へ戻る”のが基本。左からの追い越しは原則として想定されておらず、右側への復帰義務を軽視する誤解がトラブルの火種になります(条文の趣旨は「追い越しは右から」)。

4:運転支援システム(ACC/LKA)の影響

 全車速対応ACCで右車線を走り続けると、前走車に自動追従して“そのまま滞留”が起きやすいです。ACCは速度と車間を一定に保つには有効ですが、「追い越しが終わったら戻る」という判断までは代行しません。右に出たあと“戻る操作”をドライバーが意識しないと、後続に詰まりを生みやすいのです。

5:安全志向の過剰化(大型車・合流を避け続ける)

「左はトラックが多く怖い」「合流が続くから右が安全」と考え、長く右を維持するパターン。意図は安全でも、右滞留は後続の左追い越しを誘発し、全体の安全度を下げます。NEXCOのマナーガイドも、車線の正しい使い方と円滑な交通流の重要性を繰り返し周知しています。

大型トラックが追い越し車線を走り続け後続車が連なっているケースも多い(Adobe Stock@takadahirohito)
大型トラックが追い越し車線を走り続け後続車が連なっているケースも多い(Adobe Stock@takadahirohito)

追い越し車線に居座り続けると通行帯違反!

左側は空いているのに右側車線にクルマが集中している場合もある(写真AC)
左側は空いているのに右側車線にクルマが集中している場合もある(写真AC)

 追い越しを終えたのに右側を走り続けると「車両通行帯違反」にあたり、違反点数1点/反則金6,000円(普通車)の対象です。「制限速度内だからOK」という言い分は通りません。右は“追い越しのための一時的な場所”。これが大原則です。

 右滞留が続くと、後続車が左側から追い越す危険行動に出たり、過度な接近・パッシング・幅寄せなど“あおり”を誘発しやすくなります。

 2020年の法改正で創設された妨害運転(あおり運転)は、免許取り消し相当の重い罰則もあり得る重大違反です。感情的対立に発展させないことが、自己防衛の第一歩です。

居座り続けるクルマに対する“安全で穏便な”対処とは

後ろにいたクルマが真ん中の中央車線に移り、割り込むように追い越し車線に入ってきたケース。車間距離を空けすぎたためなのか?(写真AC)
後ろにいたクルマが真ん中の中央車線に移り、割り込むように追い越し車線に入ってきたケース。車間距離を空けすぎたためなのか?(写真AC)

 もし、前走車が追い越し車線を居座り続けていたら、後続車のアナタはどうすればいいでしょうか? なるべく安全、穏便に対処する方法とは?

Step1:十分な車間をキープ(最低でも2~3秒)

 至近距離で詰めるのは絶対NG。先行車の挙動を観察する余裕を確保します。車間が詰まると相手は「威圧された」と受け取りやすく、逆効果です。NEXCOの啓発も“余裕ある車間”を基本としています。

Step2:相手が戻らないなら、自分が左へ“先に戻る”

 右に閉じ込められた感覚がストレスを増幅させます。安全な間隔と速度差を確認できたら、いったん自分が走行車線へ戻り、距離を置くのが賢明です。

 無理に左から抜くより、時間を置いて交通流がほぐれる瞬間を待つほうが安全。「右の滞留=通行帯違反」のリスクは相手側にあります。あなたはリスクを取りにいく必要はありません。

Step3:やむを得ず追い越す局面でも“法とマナー”を優先

 法の趣旨は“追い越しは右から”。左から速度差をつけて抜き去る行為は、危険性が高く推奨できません。見かけ上、相手が右で減速しても、焦って左から抜くほど危険度は跳ね上がると心得ましょう。

居座り続けるドライバーへの提言

後方をよく見てほしいと感じることは多い(satoshi.o@Adobe Stock)
後方をよく見てほしいと感じることは多い(satoshi.o@Adobe Stock)

 もし、追い越し車線を居座り続ける、そんな心当たりのあるドライバーの方がいましたら、ぜひ以下の提言を読んでください。

「右に出たら、必ず戻る」を口癖に
 追い越しが完了したら3回呼吸以内にウインカー→ミラー→目視で左へ。

・ACC使用時は“戻る”も自分の仕事
 追従はシステム、レーン選択はあなた。

合流や大型車が続く区間こそ“戻る練習”
 左が混んでいても、戻る→少し走る→再度右で追い越すの繰り返しが交通全体の円滑性を高めます。

・速度計だけでなく“後方”を定期に見る
 ミラーは10~15秒に1回が目安。

編集部まとめ

 追い越し車線に居座る行為は、単なる“マナー違反”ではなく、法的リスクと事故誘発の温床です。ドライバー一人ひとりが「右は追越のため」「終わったら戻る」を徹底することが、渋滞を減らし、ムダなストレスとリスクを遠ざけます。

 運転支援が進化しても、レーンの選択と譲り合いは人の仕事。今日から実践できる小さな行動(車間・短い合図・先に戻る)を積み重ね、余裕ある高速ドライブを取り戻しましょう。

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