トヨタ S-FRはなぜ開発凍結したのか? 発売秒読み級の完成度だったのに!!

S-FRはなぜ市販化されなかったのか

GRMN FRホットハッチコンセプト/全長×全幅×全高:3570×1695×1460mm。駆動方式はFRで、1.5Lエンジンを搭載というスペックが公開された

 ここからはすべて筆者の憶測となるが、冷静になるとあれだけ期待されたS-FRが市販化されなかった理由はいくつか思い浮かぶ。

【1】いかに大トヨタでも86より小さいFR車のパワートレーン調達が困難だった

 小型FR車のパワートレーンの調達は86でも難しかったが、それでも86の時はスバルの2L水平対向4気筒エンジン、トランスミッションはアルテッツァやシルビア、RX-8などに使われたアイシン製6速MTの大改良版、デファレンシャルはターボの70スープラのもので成立できた。

 しかし、86よりパワーが小さいS-FRに適したものとなると汎用性がなく、もし専用設計となれば安価にできず断念したという事情も分かる。それはクルマの土台となるプラットホームに関しても同様だったのだろう。

 ただ、パワートレーンに関しては「東京オートサロン2010」に出展された、トヨタが欧州で販売する「アイゴ」のボディに、ダイハツにあったFRベースの小型SUV「ビーゴ」のものを使い成立させた「GRMN FRホットハッチコンセプト」という例もある。

 S-FRも「GRMN FRホットハッチコンセプト」のように現在であればダイハツがインドネシアで生産し、日本でトヨタが販売する小型1BOXバンのタウンエース/ライトエースのものから派生させるという手もあったかとも思う。

【2】GRヤリスとのバッティング

 もし、S-FRを市販化するなら、開発を担当するのは現在のGR部門だっただろう。この点を考えると2020年夏に発売されるGRヤリスのバリエーションとして市販化が想定される1.5L・NAエンジン仕様とのバッティングは否めない。

 いくら大トヨタといえど両方を市販化するのは無理だろう。その場合、WRC参戦もあり優先されるのはGRヤリスであり、S-FRが幻に終わったのもわかる。

写真は初期モデルの86。すでに中古車価格はこなれてきており、100万円台も多数

【3】86の中古車とのバッティング

 もし、S-FRがめでたく市販化されたとしたら、案外強力なライバルは同価格となり得る中古の86かもしれない。

 中古の86に乗っている筆者が、仮にS-FRの購入を検討した場合、

・86が2ドア車として不便なわけでも、維持費が掛かるクルマでもない
・86のほうが主に荷物が積めるという意味でスペースが広い
・S-FRのパワーにもよるが、FRらしくパワースライドで遊ぶ楽しさは86のほうがありそう

といった理由で「どちらか1台にするなら中古86を選びそう」と思った。

 こうしたことを考えるユーザーが多いとしたら、市販化されても数が売れるわけではないこの種のクルマは、輸出も前提に計画する必要があり、86の存在も踏まえると「果たして海外でS-FRが売れるだろうか」という懸念もある。

S-FRの開発再開は「ゼロではないかもしれない」!?

2代目(NB型)に設定されたロードスタークーペ。3代目以降、完全なクーペボディは存在しないが、ロードスターのクーペ版=S-FRとすれば両社にとってコストメリットもありそうだ

 これも100%筆者の願望であるが、最近、開発再開の可能性は「ゼロではないかもしれない」とも思っている。

 というのもS-FRの公開時、筆者はトヨタのアライアンスを生かして「マツダ ロードスターをベースに、クーペにしたような形でもいいから市販してほしい」とも感じた。これならS-FRのコンセプトに近いクルマができそうだ。

 ただ、「マツダもロードスターをクーペにするのは嫌うだろうし、それをもし諸経費込み200万円でトヨタに売られたら、ロードスターが打撃を受けるからダメだろうなあ」というのもあるだろう。

 しかし、ロードスターベースにフィアット向けに生産していたアバルト 124スパイダーは近々生産終了になるという。

 そうなるとロードスターファミリーの生産台数が減り、ロードスターの生産維持や継続に影響が出ないか心配だ。

 ならば、もし両社で折り合いが付くなら、この際2シーター+荷物置き場でも良しとして、ロードスターのクーペをS-FRにするというのも悪い話ではないように思う。

 駆動方式だけでクルマの良し悪しを決めるのもよくないが、やはりFRの楽しさがあるというのも事実だ。

 今からでも遅くはないし、どのような手段でもいいから安価な価格でS-FRが世に出ることを期待したい。

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