トヨタ S-FRはなぜ開発凍結したのか? 発売秒読み級の完成度だったのに!!

トヨタ S-FRはなぜ開発凍結したのか? 発売秒読み級の完成度だったのに!!

 東京モーターショーにも出展!! 話題を集めたあのコンセプトカーは、なぜお蔵入りに!? 幻のコンパクトスポーツ「トヨタ S-FR」が市販化できなかった理由を考察!!

 今から約4年前。2015年の東京モーターショーに、トヨタは「S-FR」という小さなFR(後輪駆動)スポーツカーのコンセプトモデルを出展。可愛らしいデザインにイエローのボディカラーを纏った同車は大好評だった。

 さらに翌2016年の東京オートサロンにチューニングバージョンが出展されたこともあり、実際に市販化された86と同様に「市販化濃厚」とクルマ好きは大いに期待したものだった。

 しかし、あれから4年が経った今になっても市販化の噂も聞こえず、残念ながらS-FRの開発は凍結されたようだ。

 実際に市販されないコンセプトカーは数多あれど、S-FRの“完成度”は充分に量産化への可能性を感じさせるものだった。……にもかかわらず「なぜ」を考察したい。

文:永田恵一
写真:ベストカー編集部、MAZDA

【画像ギャラリー】コンセプトカーとは思えない!? S-FR&レーシングコンセプト 驚きの完成度!!


86より安くて小型!! S-FRに大きな注目

トヨタ S-FR。86よりも小型な全長4m未満、全幅1.7m未満の5ナンバーボディで、量産車に近い完成度を持っていた

 2015年の東京モーターショーに出展されたS-FRは、全長3990mm×全幅1695mm×全高1320mmというボディサイズで、エンジンをフロントミッドに積むFRかつ+2のリアシートもあるエントリースポーツカーを示唆するコンセプトカーだった。

 当時、トヨタは「大中小のスポーツカーをラインナップしたい」という意向をコメントしており、S-FRが登場した際には「“中”はすでに市販されていた86、“大”はすでに開発が噂されていた現在のスープラ、S-FRが“小”だったのか!」と心躍ったものである。

 S-FRは、画期的な軽量化、6速MTとなるトランスミッションやリアもダブルウィッシュボーンと思われる独立懸架となるサスペンションの採用、最適な重量配分といった機械的な特徴を持つ。

 搭載されるエンジンは公表されていなかったが、この時は1.5L級のNAエンジンあたりが予想されていた。

リアスタイルにもコンパクトさが凝縮されているS-FR。装着ホイールやタイヤもショーカー然とした佇まいはなく、リアル

 さらに、肩肘張らずに運転やカスタマイズを楽しめるというコンセプトも掲げられ、まさしく86の弟分的な存在であったり、40年近く前のクルマとなるFR時代のスターレット再来を思わせるクルマだった。

 また、実車を見るとコンセプトカーながら、カーナビや備え付けのモニターなしでスマートフォンの活用を示唆していた点など全体的に内外装の完成度も非常に高く、このことも市販化が大いに期待された大きな理由の1つだった。

 それだけに「こんなクルマが(簡単には言っていけないことだけど)諸経費込み200万円程度で市販化されれば若者も自分のものにできる」と思ったクルマ好きは多かったに違いない。

翌年にはS-FRレーシングコンセプトも出展!

S-FRレーシングコンセプト/全長×全幅×全高:4100×1735×1270mm。基準車よりロー&ワイド化され迫力も充分だった

 2016年の東京オートサロンに出展された「S-FRレーシングコンセプト」は、その名の通り、S-FRにレーシーなエアロパーツの装着、50mmの車高ダウン、40mmの拡幅、ブレーキ強化など手を加えたサーキット仕様。正面から見るとインタークーラーがあり、過給機付ということも確認できた。

 この頃には「S-FRの動力性能の目標はパワーウエイトレシオ(=車重を馬力で割った値で性能の目安、小さいほど良いとされる)が6kg」という開発陣のコメントもあり、車重を1000kgと想定すると、「150~160馬力の過給機付エンジンも構想にありそう」という想像もできた。

(編注:86のパワーウェイトレシオは6.25kg/ps)

 コンセプトカーは大好評で完成度も高く、ベース車を発展させたコンセプトカーもさっそく登場と、市販化に向けた三拍子が揃ったS-FRだったが、冒頭に書いたとおり、この時以来、影も形も見えない。

次ページは : S-FRはなぜ市販化されなかったのか

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