組織の民主化が着実に進展している
スズキの技術戦略における注力ポイントは、従来の5つから6つに拡大しました。
従来は、(1)100kgの軽量化を目指す軽量かつ安全な車体「Sライト」、(2)48ボルト・スーパーエネチャージ(SEC)ハイブリッドを含む内燃機関およびカーボンニュートラル燃料の燃焼技術、(3)eビターラで先行投入するバッテリーリーンなBEV/HEV、(4)「ちょうどいいSDVライト(Right)」、(5)サーキュラーエコノミーの5本柱でした。
今回、新たにガソリン車におけるカーボンネガティブを実現するCO2キャプチャー技術が追加され、6本柱へとアップデートされています。
この新しいCO2キャプチャー技術は注目に値します。走行すればするほどCO2排出量を削減する、カーボンネガティブを推進する技術となっていく可能性があります。
カーボンネガティブといえば、インドで取り組まれているバイオガス(CBG)も牛糞由来の場合にはカーボンネガティブとなります。牛糞を放置すると、CO2の28倍もの温室効果を持つメタンガスを放出してしまいます。しかし、牛糞を原材料にバイオガスを生成すれば、その利用時にCO2を排出したとしても、ネットでは温室効果ガスの削減につながるのです。トヨタが目指すマルチパスウェイとはひと味もふた味も異なるのが、スズキのマルチパスウェイ戦略です。
今回の技術発表会に参加して感じたことは、スズキの技術本部において組織の民主化が着実に進展しているということです。
発表会では、個別技術の詳細説明よりも、将来技術に対する思想やシナリオ、チーム体制、取り組み姿勢といった「HOW」の部分に焦点が当てられていました。
かつてのスズキの技術本部は、故・鈴木修相談役のトップダウンの指示を待つ傾向が強かったと思います。しかし現在は、風通しがよく、独自性とオリジナリティを備えた、溌剌とした技術チームが形成されつつある印象を受けました。
その一例が「スズキ未来R&Dプロジェクト」です。
若い技術者たちの熱量を極大化し、チーム力を高める活動が進められています。若手から中堅のコアメンバー10名が主導して実行することで、熱量をもって組織の壁を越えた交流と挑戦ができる風土をつくっているのです。

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