ヘッドレストの語源を知れば、本来の存在意義が分かる?
ヘッドレスト(headrest)のrestは英語で休息、休憩とか、乗せる、もたれるという意味で、そのまま頭部を預けてリラックスさせるアイテムと思われているドライバーも多いかもしれない。
しかし、前述の通り運転中はヘッドレストに頭部を預けるような姿勢になることはまずありえない。
ヘッドレストを信号待ちで首を休めるためや、高速道路のパーキングエリアでの休息時にシートを倒して休憩した時に頭部を乗せるためのものと思われていないだろうか。
そうだとすれば、それはほぼ完全な誤りだ。ヘッドレストは英語でもheadrestで通用するアイテムだが、本来はヘッドレストレイント(headrestraint)という言葉で、省略されて今の呼び名になっている。
restraintは、拘束とか制限、制止という意味があり、headrestraintは「頭部を拘束して守る」という意味が込められているのだ。
つまり頭部を預けて休息させるのではなく、イザという時に頭部を守ってくれるのが、ヘッドレストの役割なのである。
1960年代くらいまでのクルマは、ヘッドレストは装着されていない車種やシートも多く、後付けで追加することもできるような装備だった。
いわゆるローバックシートと呼ばれる背もたれの低いシートは、室内を広々と見せて何とも言えない雰囲気を醸し出すから、未だにこのスタイルを好むマニアも少なくない。
それが日本では1969年3月から運転席にはヘッドレストが義務付けられたことによって、室内の雰囲気は大きく変わった。
だが、そもそもヘッドレストが義務付けられたのは、それが追突事故による頚椎のダメージを軽減することが分かったからだ。
信号待ちなどの停車中、あるいは低速走行時に後方から追突された時には、人間の身体は複雑な反応を示す。
後ろから押し出されるように前方へと身体が移動するのに対し、脳が詰まった重い頭部は慣性の法則で動き出しが遅れることから、いわゆる「むち打ち」という状態となり、深刻なダメージを負ってしまうのだ。
ヘッドレストは、頭部が後方へと動き過ぎてしまうのを抑制することにより、動きの幅を抑えてくれる。
だからこそ、シート背もたれの角度は適切な状態まで起こし、ヘッドレストと頭部との距離を適切に保つことが大事なのである。
ヘッドレストの位置が低いと追突事故の際に頭部は後ろに揺れた時にしっかりと支えることができずに上向きに首を曲げてしまうことになる。
また高すぎても逆に下を向くように曲げてしまい、頚椎の負担が大きくなる。前席でも後席でも、ヘッドレストの高さまで、しっかりと身体に合わせるようにしよう。
アクティブヘッドレストと、追突の衝撃を和らげるシート構造
以前はヘッドレストに前後の調整機能をもつ車種も多かったが、最近は減少傾向にある。
またアクティブヘッドレストと呼ばれる、追突時に頚部のダメージを軽減する機能をもつヘッドレストも15年くらい前に登場し、搭載されるクルマも増えた。
これは後方からの衝撃を検知すると、ヘッドレストが前方へとスライドして頭部との距離を縮めて、前後に揺さぶられる頭部の動きを減らす働きをする。前後調整機能も、ヘッドレストと頭部の空間を縮めるためのものだ。
その代わりアクティブヘッドレストに近い効果を、別の機構で実現しているクルマも増えている。
例えばスバル車には、シート背もたれの内部構造に秘密がある。シートバックの内部構造に一定以上の荷重が掛かると壊れる樹脂製のリンクを組み込むことにより、後方から追突されるとリンクが破壊されて外れるようになっているのだ。
これにより、シートを支えるスプリングの連携が無くなって身体を支える剛性が低下して身体が沈み込むようになり、ヘッドレストと頭部の距離も縮まる。
ほかの自動車メーカーでも、ヘッドレストのステーをシート内部まで延長して、身体が沈む込む力を利用してヘッドレストを前方へと倒れ込ませる機能を盛り込んでいる車種も多い。
これをアクティブヘッドレストと呼ぶメーカーもあるようだが、簡易的なシステムなのでアクティブと言うほどではないと思うが、一定以上の効果はある。だからヘッドレストの前後調整機能が廃止される傾向にあるのだ。
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