2025年9月2日、ノア/ヴォクシーに一部改良が施された。車両本体の改良は、ボディ色の整理やメーカーオプションの標準化など、見直しレベルのものが多かったが、ディーラーオプションには大きな追加があったのをご存じだろうか。追加されたのは士別フィンというパーツ。一体これはどんなものなのか、さっそく90ノアオーナーの筆者が、愛車に士別フィンを取り付けて変化を体感してきた。
文:佐々木 亘/画像:佐々木 亘・トヨタ
【画像ギャラリー】安くて小さい!! なのに魔法のようにクルマの”安定感”爆増の「士別フィン」の力とは?(25枚)画像ギャラリー士別フィンとは一体何なのか
2024年、KINTO FACTORYのトヨタアップグレードセレクションに加わったのが「士別フィン」だ。
士別フィンの「士別」は、トヨタの試験場がある北海道の地名。冬はマイナス30℃にもなり、一晩で数十センチも雪が積もる厳しい環境に、東京ドーム200個分(930ヘクタール)の広大な試験場を置いて、トヨタは40年以上にわたって技術を鍛えてきている。
この試験場には、超高速走行性能テストを行うための1周10km、4kmもの直線路を有したテストコースがあるのだ。直線路は地球の丸みのため、中央部が両端よりも24cm高くなっている。
この直線路を高速域で走る際に、1Hz以下の揺れが起こるというのだ。この揺れは実際にクルマのブレや揺らぎのように感じるもの。時間にして1秒に1回以下の非常にゆっくりとした揺れだという。
このゆっくりした揺れは車両の周り発生する大きな空気の渦や、左右で圧力差が生まれることが大きな原因。そこで、ゆっくりとした大きな左右変動渦を、床下に配置したフィンで小さな渦群の流れに変換して、大きな渦変動を緩和するのが士別フィンの役割だ。
高さ僅か3mmのフィン、32平方センチメートルの部品が走りを変える
士別フィンは縦40mm・横80mm・高さ3mmの小さな部品だ。高質なプラスチックゴムのような材質で、フィンと反対の面には両面テープが付いている。これを車種別に研究された取付位置へ、正確に貼っていくことで大きな効果を生み出すのだ。ちなみに取付位置は、駆動方式(2WD・4WD)やガソリン・HEVによって異なるのも興味深い。
ノアの場合はフロントに6枚、フロアセンターに7枚、リアに5枚の、合わせて18枚を貼付する。貼り付けるのはフロントアンダーカーバーの下やフロア部分、ガソリンタンクの下やリアバンパー部分など様々。基本は左右対称に貼付されるが、そうならないところもあるのが面白い。中には士別フィンを切って貼付する場所もあり、整備士の方は取付説明書とにらめっこしていた。
取り付け場所はミリ単位で指定されるため、正確さと根気のいる作業。逆に言うと、フィンだけあっても貼付場所が分からなければ、士別フィンの効果はフルに体感できないというわけ。
90系ノアに用意された士別フィンは、1台分で2万460円、標準作業時間は0.6時間だ。工賃込みで2万7000円前後の費用がかかってくる。
音もハンドリングも大きく変わる。
公式に謳っているのは、カーブ・直線走行時の走行安定性向上と横風等外乱時の安定性向上だ。車両の下や後方の気流が整い、こうした効果が得られるというが、実際はどうなのか。取り付け後のノアで高速道路へ出てみた。
まず感じるのが、フロア下から聞こえてきていた「ゴォー」という風切り音の大幅低減。風切り音はAピラー・Bピラー部分からも聞こえていたが、士別フィン取り付け後は大きく音が減衰している。これだけで、車両周辺の空気の流れが圧倒的によくなっていることが分かった。
またステアリングの操作感覚にも変化があった。90系になって大幅に改善はしたものの、背の高いミニバンであることから直進安定性がセダンなどと比べると劣ってしまうノア。高速道路走行時には、ステアリングセンターが曖昧で、修正舵が非常に多かった。簡単に言えば、まっすぐ走るのが苦手なクルマだ。
それが士別フィンを付けた途端に、ステアリングセンターがビシッと決まっている。クルマのブレが少なくなり、細かな修正舵が必要なくなっているのだ。これは、レーダークルーズコントロール+レーントレーシングアシスト起動中にも感じる部分。まっすぐ走る能力が極めて高くなり、高速走行時の不安定さが無くなった。運転中のストレスも減ることから、ロングドライブでの疲れにくさにもつながっていくだろう。
フィーリングとしては、サスペンションを社外品に交換し、タイヤを太く大きくした感じに近い。通常なら20万円も30万円もかけて得られる走行フィールが、僅か3万円弱で得られるというのは嬉しい限りだ。
士別フィンの効果を感じやすいのは、時速50km以上の走行時。士別フィンは、高速道路をよく走るという方には、超おススメのディーラーオプションとなっている。
対応車種は50系プリウス・10系シエンタ・90系ノア/ヴォクシー・ヤリスクロス・40系アルファードなどで、順次拡大予定。士別フィンに興味のある方は、愛車のディーラーオプションカタログを、ぜひ覗いてみてほしい。




























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