軽量化で期待できるメリット
それでは、タイヤとの組み合わせで性能が変わることを念頭に置いた上で、ホイールの軽量化のメリットとデメリットについて考えてみよう。
クルマの足元を支えるホイールとタイヤについてよく耳にする話として、「バネ下1kgの軽量化はバネ上(ボディなど)10kgの軽量化に相当する」という文言がある。
これはモータースポーツの経験則から生まれたようで、おそらく「ホイール1本×1kg」の変化と類推して「4本総計4kgのバネ下質量の軽減」が「10kgの軽量化」に当たると解釈したほうがよいと思われるが、むろん「バネ下質量軽減」は軽んじてはならないテーマだ。
では、より軽いアルミホイールを装着すると、具体的に車両の挙動の何が変わるのだろうか。
日常的にクルマを走らせるうえで、一番わかりやすい効果を期待したいのは燃費の向上だろう。
軽量化による効果としては、転がりやすさ(転がり抵抗の少なさ)が向上するということであり、転がり抵抗の少ないタイヤを組み合わせれば燃費向上の効果は増すはずだ。
走りについては、軽量化によってステアリング・レスポンスの向上を狙えると言われている。
バネ下質量が軽くなるとスプリングなどのサスペンションの動きが少なくなることから、コーナリングや加減速でのボディ全体の荷重移動がスムーズになり、拳動変化が少ない安定した走行が可能ということになる。
むろん、タイヤのグリップ性能に関わることだから、タイヤの選択にも気を遣う必要がある。
加減速での慣性モーメントの抑制という面でも、回転部分の外周(タイヤと組み合わされるリム部)が軽く設計されているほど少ない力で回転・停止ができるのでブレーキ性能の向上が期待できる。
ただし燃費に比べて、シャシー性能に関わるこれらの多くは微細な領域での挙動変化だから、スポーツ走行などを除いて誰もが感じ取れるような明らかな効果があるとは言いにくく、日常的な話として成立するかどうかは難しいところだ。
軽量ホイールを装着するとかえって乗り心地が悪化することも
前述のようにホイールの軽さが生み出す動的な効果として期待されるバネ下重量の軽減については「軽ければよい」のかといえば、実はそうではない。
多くのユーザーがホイールを換えることで期待する変化は、やはり乗り心地ではないだろうか。
足回りからステアリングに伝わる振動をいかに抑えるかは、クルマ自体の性能や商品性の評価に関わるから、自動車メーカーの純正タイヤでも耐久性とともに重要な設計要素でもある。
但し書きが多くなり恐縮だが、純正ホイールをより軽量な社外品に換えれば即乗り心地が改善するというわけにはいかないことを心しておきたい。
具体例を示しておくと、ホイールを軽く仕立てれば、路面への追従性が上がることが考えられる。
とはいえ、路面からの細かい突き上げに敏感に反応して拾いやすくなり、乗り心地が悪くなったり、ロードノイズが増大することもあるのだ。
そこで一部の高級車では大径ホイールをあえて過度な軽量化を施すことなく、タイヤの性能やダンパー/スプリングのセッティングに関して、バランスを採りつつ快適な乗り心地を確保している例もある。
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