横断歩道は、歩行者の命を守るための最前線である。ところが現実には、信号機のない横断歩道でクルマが止まらず、そのまま通過してしまうケースがいまだに多い。JAFが2025年8月6日~8月28日に全国で実施した最新調査では、一時停止率が過去最高の56.7%に達したものの、それでも4割以上が止まらないという結果だった。今回は既報の内容に加え、この新しい調査データを軸に、横断歩道の現状と課題、そしてドライバーと歩行者が“今すぐできる対策”を整理してみたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(トビラ写真:敢治 林@Adobe Stock)
横断歩道で“止まらない”とはどういうことか
まず確認しておきたいのは、「歩行者が横断しようとしているのにクルマが止まらない」という行為そのものが、道路交通法で明確に禁止されているという点である。
歩行者が横断歩道に近づいていれば、クルマは横断歩道手前で一時停止し、歩行を妨げてはならないと定められている。だが実際には、歩行者の動きに気づかなかったり、横断の意思表示に気づかないままクルマが通過してしまう状況が珍しくない。
2024年のJAF調査では一時停止率は53.0%で、ほぼ半数のクルマが止まっていない計算になる。翌2025年は56.7%まで上昇したが、依然として改善の余地は大きい。歩行者の安全を守るための基本ルールが、まだ充分には守られていないのが現状である。
最新データが示す、“止まらないクルマ”のリアル
今回のJAF調査は、全国の信号機のない横断歩道で、計6226台を対象に行われた。そのうち一時停止したのは3528台で停止率は56.7%。前年から3.7ポイント上昇し、この10年間で最も高い数値を記録した。
しかしその一方で、4割以上のクルマが歩行者の横断を妨げているという、看過できない現実も突きつけられた。
都道府県別で見ると、長野県(88.2%)のように80%超えという優等生地域があるいっぽう、40%に届かないケース(北海道、大阪府、福井県、山口県、沖縄県)も依然として存在する。視認性の悪さ、速度の出やすい道路、ドライバーの意識、地域の交通事情など、さまざまな要素が影響しているといえそうだ。
今回の調査は各都道府県2カ所での実施であり、すべての道路状況を反映しているわけではない。しかし全国的に“止まらないクルマが根強く存在する”という傾向は明らかである。
なぜ止まらない? ドライバー・歩行者・道路環境が抱える問題
横断歩道でクルマが止まらない理由は、単純なものではなく、複数の要因が絡み合っている。
ドライバー側の典型的な言い分としては、「歩行者に渡る気配がなかった」「後続車が来ていて止まりづらかった」などが挙げられる。とくに左折・右折では対向車や自転車に意識が向き、歩行者の確認が後回しになりがちだ。
また歩行者の意思表示が曖昧だと、「ただ待っているだけだろう」とドライバーが判断してしまうことも多い。
歩行者側にも課題がある。無理なタイミングで飛び出したり、夜間に黒っぽい服装で歩くと視認性が極端に低下する。ドライバーからすると“見えない歩行者”になってしまうのだ。
道路環境にも問題はある。横断歩道のペイントが薄れていたり、カーブ直後に横断歩道があるなど、停止判断が遅れやすい場所も少なくない。
さらに道路交通法では“横断歩道手前30m以内での追い越し・追い抜きは禁止”されているが、これを知らないドライバーが意外なほど多い。前車が止まっている理由を理解できず、そのまま追い越してしまうケースもあり、これが横断歩道の危険度をさらに高めている。








コメント
コメントの使い方記事の指摘も尤もで
ごく普通のドライバーは、気づいたら止まると思います
止まらないのは見えてない(ドライバーが悪い)か、渡るか判断できてない場合(渡る側も悪い)が多い筈
渡りたい時は恥ずかしがらず、ちゃんと手を挙げてほしい。実行してる子供やお爺さん達はどこでも止まって貰えます
運転というのは後続車含め全体の利益・スムーズな交通を確保する義務があるので、無暗やたらに止まったら迷惑車になってしまいます