マルチパスウェイを考える時、重要な選択肢となる「水素」。小学校の理科の実験にも登場するありふれた元素だが、その特性が面白い。クルマの動力としては「液体」と「圧縮気体」の2つがあるが、それぞれの違いはどこにあるのか?
※本稿は2026年1月のものです
文:国沢光宏/写真:トヨタ
初出:『ベストカー』2026年2月26日号
知れば知るほど面白い! 圧縮水素と液体水素
水素は知れば知るほど面白い物理的な特性を持つ。そして皆さん特性を知らない。
そもそもメチャクチャ軽い! 水素をマイナス253℃まで冷やすと液体になる。液体の時の体積あたりの重量は猛烈に軽く1000ccあたりわずか71g。
水1000ccだと1kgなので、めっぽう軽い。50Lタンクを満タンにしても3.5kgにしかならないワケ。また、1立方メートルの液体水素を気体にすると、800倍になります。
ちなみにMIRAIの水素タンク容積は2本で141L。ここに5.6kg分の圧縮水素を貯められる。
同じ容積のタンクに液体水素を入れるとどうか? 意外なことに10kgしか入らない。大ざっぱに言って燃料電池や水素エンジンのタンクを圧縮水素から液体水素にしても2倍までは積めないのだった。もう少し掘り込むと、燃料電池と水素エンジンの熱効率は後者が半分といったイメージ。
つまり同じタンク容積であれば、圧縮水素使う燃料電池車と、液体水素使う水素エンジン車と同じくらいの航続距離になります。
どちらが実用的か? こらもう難しい。圧縮水素はタンクに入れておいても、ほぼ減らない。一方液体水素だと、マイナス252℃台になったら沸騰して気体になってしまう。マイナス253℃以下をキープしておかなければ、最悪800倍(800気圧)まで上がる。
圧縮水素タンクと同じような強固な構造を持たせないとならない。加えて液体水素タンクの周囲は凍り付く。もっといえば、液体水素を気体にする際も凍り付かないようなシステムが必要。
これらの課題、入れた液体水素をすぐ使うモータースポーツや、大型トラックの定期便用に使うのなら問題なし。熱はエンジンから豊富に出るため、凍結防止のために使える。
逆に燃料電池を液体水素で運用しようとしたら、凍結防止のためのエネルギーが必要になるなどで意味なし。
ここまで読んで聡明な人は理解したと思う。燃料電池車であれば圧縮水素を使うのがベスト。水素エンジンだと圧縮水素使ったら航続距離が半分になってしまう。したがって液体水素を使わないと実用にならない。さらに水素の価格が高ければ、燃料電池圧倒的に有利になる。
どちらが優位か? 現時点だとわからない。だからこそトヨタはモータースポーツで液体水素の可能性を探っているし、三菱ふそうやヒョンデなど大型トラック用の水素エンジンの開発に着手している。
個人的には乗用車なら扱いが簡単な圧縮水素使う燃料電池。大型トラックや建設機械などは液体水素を使う水素エンジンかな、と思う。
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