モータースポーツで華々しい実績を誇るTOM’Sが、トヨタのサブスクサービスであるKINTOとコラボしてコンプリートカーのレンタルサービスを開始した。ここでは、3台のレンタル車の中からトヨタ GR86 by TOM’S×KINTOをご紹介する。
※本稿は2025年11月のものです
文:梅木智晴(ベストカー編集委員)/写真:奥隅圭之、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
佇まいで伝わる「本物」の存在感
トムスがGTレースなどで得た知見からスポーツ走行時の空力性能を追求したエアロパーツがプロポーションをシュッと引き締める。
ピアノブラックのフロントリップ、サイドスカート、トランクリッド後端のダックテールスポイラーは、けっして派手さはないのだが、「本物」の存在感を放ち、ノーマル86との違いを静かにアピールする。鍛造アルミホイールはトムスコンプリートカーでお馴染みのTWF04だ。
インテリアはほぼノーマル。シートもシフトノブもノーマルのままで、あくまでも「素材」を提供するというスタンスなのが好ましい。
ただし、ステアリングだけはバックスキンを採用。スポーツドライブではステアリングの滑りは致命的。バックスキンはストリートでの素手でもしっとりとした触感と確実なグリップで滑り知らずだ。
この仕様に近い「トムス86TS」のオーナーとなったなら、好みに応じてバケットシートを入れたり、サーキット走行用にフルハーネスシートベルトを装着すればいい。
エンジンルームは、ほぼノーマルの見た目だが、サスペンションアッパーがピロボールマウントとなっているのがわかり、気分が盛り上がる。
エンジンはノーマルのままで235ps、25.5kgmだが、オールステンレスのエグゾーストシステム「トムス・バレル」が奏でる重低音のどっしりした排気音が気持ちを高める。
クラッチはスポーツタイプを装着するが、ペダルやシフトの操作感はノーマルとほぼ変わらず、特に気を使うことはない。もちろんアイドリングも安定している。
自身でチューンする際の「基準」となる仕上がり
走り出すと、車体と足回りのソリッドな一体感がシートを通した全身から感じられる。車体全体がガチっと塊のような剛体となってサスの入力を受け止める。
「トムス86TS」よりはややソフトめにセットアップしたとはいえ、それなりに締め上げられたサスペンションの入力をしっかりと受け止めている。路面の微小なギャップなどの変化をドライバーにインフォメーションとして伝えてくれるのだ。
なるほど、ポテンザRE-71RSのソリッドでケース剛性の高い入力には、この足と、受け止める車体が必須だということがよくわかる。
今回は街なかを中心とした一般道での試乗だったが、これならサーキットでのスポーツ走行でも気持ちよく走らせることができるだろう。ブレーキは事前の説明どおり、踏み始めからしっかりと制動力が立ち上がるタイプなので、ストリートでも違和感なく、ノーマル感覚で操作できた。
“吊るし”のGR86ではちょっと物足りないんだけど、さて、自分でイチから手を入れてチューニングを仕上げていくのは「どこから」、「どんなパーツで」手を入れていこうか迷ってしまう。
ところが、このトムス86は「おすすめ基本メニュー」をバランスよく組み上げているので、チューニングカーの入り口を味わうには最適だ。
この仕様である程度乗って、さらに手を入れたくなる頃には、「なにを」、「どんなパーツで」仕上げていったらいいのか、自分なりの方向性が見えているだろう。






















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