冬の時期、16時を過ぎると薄暗くなり、あっという間に真っ暗になる。クルマの交通量が多い大通りではそんなに感じないが、1本路地に入り歩いていると、向こう側から来たクルマのヘッドライトが眩しいと感じることが多々ある。LED化が進んだいま、夜間に「ヘッドライトが眩しい」という声が急増している。ハイビームが基本というルールを耳にする一方で、「ロービームで走ると切符を切られる」という話まで聞こえてくる。果たして何が本当で、私たちはどう使うのが正しいのか。最新事情を踏まえて検証していく。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(beeboys@Adobe Stock)
通常はハイビーム、対向車が来たらロービームが基本
夜間の走行で、ハイビームが基本だというルールは道路交通法で定められている。とはいえ、実際に夜間の市街地をハイビームで走り続けているクルマはほとんどいない。これは、交通量の多い日本の道路事情が原因である。
たしかに山道や郊外の暗い道では、ハイビームは重要な安全装備である。ハイビームはロービームに比べて照射距離が長く、歩行者や動物、自転車の早期発見につながる。しかし都市部では交通量が多く、対向車や前走車が常に存在する。そのためハイビームを使用し続けることは相手を眩惑するリスクがあり、結果として大多数のドライバーがロービームでの走行を選択している。
さらに近年はLEDヘッドライトが普及したことで、照明の色温度が高くなり、白くギラつくように感じやすくなった。LEDはハロゲンに比べて直進性が高く、光が鋭く感じられるため、ハイビームを使った際の眩しさはより強くなる。結果、多くのドライバーが「基本はロービーム」という“実情に合わせた運転”をしているのが現実だ。
とはいえ、法律上の建前としては「ハイビームが基本」。警察庁も「状況に応じてハイビームを積極的に使用することが望ましい」と呼びかけている。ただし、無遠慮な使用は他者に危険を及ぼすのも事実であり、この“建前と現実のズレ”こそが、いまのヘッドライト問題を複雑にしている。
特に消し忘れの対向車が以前より増えているのを実感する。これは免許更新時には交通安全協会の教官が「夜間はハイビームが基本」と推奨していたのも原因の一つではないか。
実際、筆者が受けた講習では、ハイビームの使用を奨励している要因の1つに、薄暮(夕暮れ時)や夜間の視界不良が原因で交通事故を起こすケースが増えていると説明があった。確かに夜間、街灯が少ない道路を走っていると前方が見えにくく歩行者や自転車が突然現れたように気付いて驚くことがある。ハイビームにすると標識もよく見え、黒っぽい服を着た歩行者も全身が見えるようになる。
ロービームで走っていると切符を切られるのか?

改正道路交通法の施行と合わせて警察庁のWEBサイトではハイビームの積極使用が推奨されて以降、さまざまなメディアの報道を通してハイビームが基本というのをドライバーが知ったためなのか交通量の多い市街地でもロービームに切り替えないドライバーが多くなった。
しかし、道交法ではハイビームが基本で走行しなければいけないという規則のほかに、すれ違いや先行車がいる場合にはヘッドライトをロービームに切り替えなければいけないという規則が存在する。
実際には、都市部では対向車や先行車がいない状況は深夜を除けばほぼないといっていいだろう。都内を走る多くのドライバーは、基本はロービームで走行し、照明のない見通しの悪いところなどでハイビームに切り替え、対向車が来たら、眩しく感じさせないよう、ロービームに切り替えているはずだ。
ここで講習時に配布された「交通教則」にハイビームの効果が載っていたので引用しておこう。
ヘッドライトの照射距離はロービームで約40m、ハイビームでは2倍以上の約100m先を照らす。夜間、ハイビームで走行した場合にはロービームの場合よりも2倍以上遠くから歩行者や自転車を早期に発見することができる。
免許更新から数日経った夜間、普段ロービームで走っている路地でハイビームにしてみると、たしかに遠くまではっきりと見えて、目から鱗状態になった。ただし、歩行者がいた場合はかなり迷惑に感じることだろう。
おそらくハイビームが基本ということを知ってハイビームにして走っているドライバーのなかには、ロービームにしないと「減光等義務違反」となることを知らないのだろう。罰則は加点1、反則金は6000円となる。
過去、警視庁に「ハイビームを使わないと違反になるのか」と問い合わせたことがあるが以下のような回答があった。
「道交法の第52条を確認してください。教則本などでも奨励していますが、東京都内の街中では夜間でも明るく、ハイビームは対向車の走行の邪魔になりますから、この件に関する違反行為の取り締まりは行っていません」。
いずれにしても対向車や先行車、向こうから歩いてくる歩行者や自転車にハイビームで眩しく感じさせないよう、相手を思いやる気を使った運転を心がけたいものだ。個人的には街中で点灯する必要あるのかと疑問に思う、眩しすぎるLEDフォグランプやリアフォグについても、どうにかしてほしいと思っている……。
オートハイビームは必要なのか?
最近の新型車では、オートハイビーム(AHB)の装着率が高まっている。これは前方の車両や明るさをセンサーで検知し、自動的にハイビームとロービームを切り替える機能だ。
この機能が有効なのは、ドライバーがこまめに操作しなくても、適切なタイミングでライトを制御してくれる点にある。特に夜間の郊外道路では効果が大きく、歩行者の早期発見に貢献する。
しかし課題もある。センサーが対向車を誤検知したり、街灯が多いエリアではハイビームにならないなど、判断が完全ではないのが現状だ。またドライバーが機能を過信し、周囲の状況確認を怠るリスクも指摘されている。
さらに、オートハイビーム独特の“急な切り替わり”を不快と感じるドライバーも多い。ハイビームからロービームに変わる際の光量の落差が大きいため、「まぶしい! と感じた瞬間には切り替わっている」という場面もある。
ただし技術は年々進化しており、近年はより高精度な制御が可能になってきている。自動運転技術の進化とともに、ヘッドライトの自動制御性能も発展が続いており、将来的には“人間より上手に切り替える”レベルへ到達する可能性が高い。
オートハイビームは万能ではないが、夜間安全の向上に確実に寄与する装備であり、基本的には“使うべき機能”といえるだろう。
オートレベリング機能の装着義務化で変わるか?
そんななか国土交通省は、道路運送車両法の保安基準を一部改正し、自動前照灯照射方向調節装置(オートレベリング)の装着義務付け対象を広げた。これまで2000ルーメン超の光源を使用する高輝度のすれ違い用前照灯(ロービーム)を備える自動車のみが対象だったが、2027年9月から順次、二輪車や特殊車両など一部を除く、すべての新型車と継続生産車に適用することになった。
2024年9月20日に公布・施行。 適用日は、乗用車の新型車が2027年9月1日から、継続生産車が2030年9月1日から。車両総重量3.5トン超のトラックや乗車定員11人以上のバスの新型車は2028年9月1日から、継続生産車は2031年9月1日からとする。
プレスリリースでは「依然として、ヘッドライトの眩しさにより、周囲の自動車等の発見が遅れ、事故に繋がったというケースが過去10年間(2012~2021年)で300件以上発生しています。このような事故を防止するため、オートレベリングの装備拡大が国際的に議論されてきたところ、今般、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)において、このオートレベリングに関する基準改正が合意されたことなどを踏まえ、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の改正を行います」とあった。
後部座席に人が乗車したり、トランクに荷物が積載されたりしていると、車両後部が下がり、ヘッドライトが上を向いてしまうため、対向車のドライバー、特に高齢者ドライバーに眩しさを与えるリスクがある。
このヘッドライトのオートレベリング機能によって、乗員や荷物の重さにより車両後部が下がった場合、車両に搭載したセンサーにより車両の傾きを検知し、上を向いた光軸を適切な角度へ自動的に補正する。
このオートレベリング機能の装着が義務化されれば、クルマのヘッドライトが眩しいと感じることが少なくなるかもしれない。












コメント
コメントの使い方対向車のこっちとしてはめちゃくちゃ眩しいのでやめてほしい
高齢者の運転する車と某メーカーの軽自動車が眩しい
ポン付け爆光LEDに交換するのはいいがカットライン調整をせず上目になったままや対向車や歩行者がいるのにハイビームのまま走行を続けると、「減光等義務違反」になる可能性がある
そもそもADASのカメラが進化しないとヘッドライトがいくら進化しても眩しいのは改善しないでしょ。
それに車が進化するにつれドライバーがどんどん馬鹿になっていくのもどうにかしないといけないと思う。
危ないのはもちろんだがこんなのが続いたら目が悪くなるわ❗
車高によってはロービームでも眩しいしな
ダイハツ全車、トヨタ(特にブラド、ハイエース、ハリアー、ヤリスクロス、プリウス、アクア、シエンタ)、セレナ、NBOX、ジムニー、スペーシア、CXなんちゃら…などは酷い。トヨタのオートハイビームは喧嘩売ってる。
オートハイビームは発展途上の中途半端な技術なので、アイドリングストップ同様、今後消えていくと思う。今後は、周りの車に合わせて器用に照らす場所を変えられるアダプティブハイビームが最低ラインかな。あと、ダイハツ車のトールワゴンは光軸を見直してくれ。眩しい率がおかしい。