外国免許切替の合格率が「ほぼ全員合格」から3割に急落! 厳格化で簡単すぎた試験に終止符

外国免許切替の合格率が「ほぼ全員合格」から3割に急落! 厳格化で簡単すぎた試験に終止符

 自国で自動車免許を所持している訪日外国人が日本の免許を取得できる「外国免許切替手続(外免切替)」の制度。しかし、外免切替で取得した免許による事故が多発し、国内では制度の甘さを問題視する声が急増していた。そんな中、2025年10月1日から外免切替の運用がついに厳格化。従来は9割以上が合格していた試験が、厳格化後は3割前後にまで急落するなど、各県の発表からその効果が早くも見え始めている。外免切替が抱えていた問題点と、厳格化による実際の改善効果を追う。

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トップ画像 Sauerlandpics@Adobestock)

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「外免切替」とは何なのか?

自国の免許をキープしながら、日本の免許も取得できる制度が「外国免許切替手続(外免切替)」だ。日本はジュネーブ条約様式のみ加盟しているが、世界一信用が高いとも言われている(Pixel-Shot@Adobestock)
自国の免許をキープしながら、日本の免許も取得できる制度が「外国免許切替手続(外免切替)」だ。日本はジュネーブ条約様式のみ加盟しているが、世界一信用が高いとも言われている(Pixel-Shot@Adobestock)

 まずおさらいしておきたい。外免切替とは「外国免許からの切り替え」のことで、自国で有効な運転免許を持っていることを条件に、その免許をキープしながら日本の免許も取得できる制度である。

 いったん切り替えれば、その後は日本で更新していくことになるため、自国の免許が失効しても問題はない。

 2024年までは、日本の免許を取得する外国人の多くが中国籍やベトナム籍の人だった。これは、日本で有効な国際免許がジュネーブ条約様式のみで、中国やベトナムが締約国ではないため、両国の免許は日本では無効=無免許扱いとなっていたことが背景にある。

 外免切替で日本の免許を取得し、さらに国際免許も取得すれば、世界約100カ国で合法的に運転可能になる。何十万円も払って教習所に通う必要がないため、多くの外国人に利用されてきた。

 外免切替の手続きは年々増加し、2024年の免許取得者は約7万5905人に達し、過去最多となっていた。

制度の欠陥・抜け道で日本の交通安全が脅かされた

厳格化前は、ホテルの「一時滞在証明」を持った外国人が多数押し寄せ、当日受付が可能だったこともあり、免許センターは大混雑となっていた(あんみつ姫@Adobestock)
厳格化前は、ホテルの「一時滞在証明」を持った外国人が多数押し寄せ、当日受付が可能だったこともあり、免許センターは大混雑となっていた(あんみつ姫@Adobestock)

 しかし、従来の外免切替には大きな欠陥と抜け道があった。なかでも問題視されていたのが、試験問題の“簡単すぎる”難易度である。

 以前の確認方法は、知識確認が「イラスト形式の問題10問(7問正解で合格)」、技能確認では「坂道発進や踏切確認の課題なし」。特にイラスト問題は「見れば誰でもわかる」と評されるほどの簡易さだった。

 さらに、ホテル滞在証明などを形式的な「住所確認」として切替申請に利用するケースが多発するなど、運用上の抜け穴も放置されていた。

 制度上は「外国で免許を取得した後、当該国に3カ月以上滞在した実績がある者」が対象だったため、本来は観光ビザでの短期滞在者は対象外である。

 しかし、実際には「どんな在留資格か」より「本国の免許を有し、日本に一定期間滞在した実績があるか」で判断され、ホテルが発行する「一時滞在証明」を“住所確認”として提出する悪用が横行。中国では外免切替を斡旋するツアーまで存在していたというのだから、もはや看過できない状況だった。

世論の過熱にも圧され10月1日から厳格化

イラストを憶えれば回答できた従来とは異なり、文章問題となった厳格化後の試験は非常に難しいとの声が上がっている(PhotoSG@Adobestock)
イラストを憶えれば回答できた従来とは異なり、文章問題となった厳格化後の試験は非常に難しいとの声が上がっている(PhotoSG@Adobestock)

 2025年(令和7年)10月1日から外免切替の運用が厳格化された背景には、外国人による事件・事故の続発がある。

 埼玉県三郷市で2025年5月に発生したひき逃げ事件の中国籍の男や、同月に三重県亀山市の新名神高速道路を逆走したペルー国籍の男はいずれも外免切替で取得した免許だった。

 今回の厳格化では、まず住所確認として住民票の写し提出が原則義務化され、観光客のように住民票がない外国人には切替を認めない方針となった。

 これにより、住民基本台帳法の適用を受けない外国人は、外交官や領事館職員など限られた対象を除き、免許の取得や更新ができなくなった。

 また、交通ルールの知識を問う試験は問題数を従来の5倍に増やし、合格ラインも引き上げた。

 従来はイラスト10問(7問正解で合格)だったが、イラストを廃止し、道路交通法の規定や優先順位、運転者責任など法的要素も含む文章問題50問に拡大。合格ラインも7割から9割へと厳しくなった。

 日本語以外にも20言語(英語、スペイン語、韓国語、中国語など)で受験可能だが、難易度は段違いに上がっている。

 さらに、筆記試験だけでなく技能試験(実技)も全面見直し。従来は「発進・右左折・停車」中心の簡易確認だったが、改正後は日本人が普通免許を取得する際と同等の評価基準に統一された。

 教習所に通って免許を取った日本人からすれば、「今までが簡単すぎた」というのが正直なところで、それがようやく是正された形である。ただし実際の標識は20言語で書かれているわけではないので、知識試験は日本語理解を前提とするべきではないかという点については、今後の議論となりそうだ。

次ページは : 厳格化の効果は顕著! 合格率は93%から38%に

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