冬の必需品となったスタッドレスタイヤ。降雪地域では事前交換が一般的だが、都市部では雪が降ってから交換することもある。サマータイヤ同様、スタッドレスタイヤも慣らし運転が必要なのか解説する。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb、Adobestock
ホイールとタイヤを馴染ませる
スタッドレスタイヤにも慣らし運転は必要か? 結論から言うと、「必要である」。理由は大きく2つある。
ひとつ目は、ホイールとタイヤを馴染ませるためだ。
これはスタッドレスに限らず、新しいタイヤをホイールに組む際にはビード部にビードクリームを塗り、組み込みをスムーズにしている。ビードクリームは主に石鹸水のような成分で、油脂ではないが、組み立てたばかりのタイヤは強い加速やブレーキでホイール上をずれてしまうことがある。
原因はタイヤクリームの成分、ホイールの精度、タイヤとホイールの相性などさまざまだが、ホイールとタイヤのビード部がしっかり馴染むまで強い力をかけないほうが安心だ。
ちなみに、ホイールバランスの狂いによる振動は80km/h付近でピークになる。50km/hではほとんど気にならないことが多いが、スピードが上がるにつれてハンドルに“ぶるぶる”と伝わる。前輪の場合は振動が直に伝わるが、後輪はボディを経由するため少し小さめだ。
もし50km/h付近から振動が出たり、120km/hを超えても収まらない場合は、別の原因も考えられるので点検が必要である。
スタッドレスタイヤも皮むきが必要
2つ目の理由は、タイヤ自体の表面を“慣らす”ことだ。タイヤは製造過程で加硫という工程を経ている。トレッド面は釜で圧力と熱を加えられ、ゴムに柔軟性を持たせると同時に、薄い皮のような被膜が表面に形成される。この薄皮は硬めで、氷雪路面でのグリップ力を十分に発揮できない要因となる。
最近のスタッドレスタイヤは、リブレット加工と呼ばれるトレッド面の微細な凹凸加工で性能低下を抑えている。しかし、それでもこの薄皮や凹凸があるうちは、本来のタイヤ性能を完全には発揮できない。慣らし運転で100~200kmほど走行し、薄皮や表面の微細な凹凸を摩耗させることで、タイヤ本来のグリップが出せるようになるのだ。
また、スタッドレスタイヤはゴムが柔らかく、ブロック周辺のエッジやサイプ(溝)が雪や氷の路面でのグリップに大きく寄与している。そのため、サマータイヤの感覚で急加速したり、無理にコーナーを攻めたりすると、これらのエッジが削れてしまい性能低下につながる。冬本番の安全を確保するためにも、柔らかいタイヤに慣れる意味でも、慣らし運転は非常に重要である。
新品でないタイヤの慣らし運転
では、2年目、3年目のタイヤはどうすればよいか。これらのタイヤでも慣らし運転は有効である。立てて保管していたタイヤは、自重でトレッド面が少しつぶれ、フラットスポットができていることがある。この場合、走り始めに振動や“パタパタ”というノイズが出ることがあるが、空気圧を適正にして50kmほど走行すれば解消されることが多い。
また、長期間保管していたタイヤは、保管環境によって表面のオイルが抜けたり、ゴムが硬くなって柔軟性が落ちていることもある。しかし、少し走行して熱を加えることで、ゴムは再び柔らかくなり、性能は回復する。
スタッドレスタイヤを早めに履き替え、サマータイヤのように急な加減速や強いコーナリングを避け、丁寧に走ることが、タイヤの寿命と性能を長く維持するためのポイントである。






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