■ライバル「ヤリス」の動向と新型フィットが背負うホンダの浮沈
ほぼ同時期に登場した「新型ヤリス(旧ヴィッツ)」の実用性も、フィットにとって追い風になるだろう。ヤリスの後席は、従来のヴィッツと比べても窮屈になったからだ。ヤリスでは前後席に座る乗員同士の間隔が37mm、後席の床と座面の間隔も32mm減り、足元空間が狭まって腰の落ち込む座り方になった。ヤリスのフルモデルチェンジにより、後席と荷室の広いフィットのメリットが一層際立っている。
そのヤリスも第46回東京モーターショー2019で披露され、発売後1カ月の受注台数は3万7000台と発表された。フィットの3万1000台よりも少し多いが、2020年2月の登録台数は3491台だから、フィットの8221台に比べて少ない。
ヤリスの登録台数が受注台数の割に伸び悩むのは、2月時点でヴィッツの在庫車を2876台も登録したからだ。2020年3月24日時点で、トヨタのホームページには、いまだにヴィッツが掲載されている。つまり2月時点では、ヴィッツの納車も行っていたので、ヤリスの登録台数が影響を受けた。ヤリスは3月の登録台数で伸びてくるだろう。
契約から納車までに要する期間を販売店に尋ねると、フィットはグレードを問わず3カ月から4カ月、ヤリスはノーマルエンジンが3カ月、ハイブリッドは5カ月弱とのことだ。ヤリスは受注が3万7000台に達した程度で、ハイブリッドの納期が半年近くまで伸びてしまう。この納期からも、国内市場に対するトヨタの力の入れ方がわかる。
ホンダでは2019年に国内で売られたクルマの内、N-BOXが35%を占めた。フィットの比率は10%だ。2002年には初代フィットが今のN-BOXと同等の25万台を登録して、国内販売の1位になり、国内で売られたホンダ車の28%に達した。
今のようにN-BOXが強烈な王者であり続け、ほかのホンダ車が売れ行きを伸ばせないと、国内で売られる小型/普通車全体の商品開発も鈍ってしまう。ホンダはフィットの販売に力を入れてN-BOXを始めとする軽自動車の比率を抑え、国内販売のバランスを整えて欲しい。
軽自動車は儲からない商品でもあるから、N-BOX比率が35%、軽自動車全体になると50%を超えるのは、ホンダにとっても喜ばしくない状態だろう。
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