首位を狙う新型フィットが背負うホンダの浮沈と不安要素

首位を狙う新型フィットが背負うホンダの浮沈と不安要素

 2019年秋の東京モーターショーで世界初公開され、2020年2月14日に発売されたホンダの「新型フィット」。

 その登場初月となる、2020年2月の販売台数は(月なかばの発売開始ながら)8000台を超え、車名別販売ランキングで7位(軽自動車除く)に食い込む好成績。

 N-BOXが好調のホンダだが、それがゆえの問題をホンダが抱えているという。今回は、新型フィットの強みと課題、そしてホンダが国内市場で抱える将来の浮沈にもかかわる問題点を考察していく。

文/渡辺陽一郎
写真/編集部

【画像ギャラリー】トップを狙うべくグレード体系を工夫した「新型フィット」5つのバリエーションを紹介!


■N-WGNのあおりを受けた新型フィットのデビュー

 日本自動車販売協会連合会のデータによると、2020年2月における国内の小型/普通車登録台数ランキングで、「新型フィット」が7位に入った。登録台数は8221台だ。新型フィットの発売は2月13日だから、半月ほどの間にこの台数を登録した。またホンダは、新型フィットの発売から1カ月を経過した2020年3月16日に、受注台数が3万1000台を超えたと発表している。

人に心地よいを開発テーマに掲げられた新型フィット。先代型のスポーティなデザインから一転、初代・2代目に近いデザインを採用した
Aピラーは細いピラーを組み合わせて三角窓のようになっており、死角をなくす工夫がされている。横基調のインパネデザインは、シンプルながら新しさを感じさせる

 新型フィットが最初に公開されたのは、2019年10月下旬から開催された「第46回東京モーターショー2019」であった。ほぼ市販車の状態で出展されたから、この時点で購入を決めたユーザーも多かっただろう。

 その後、本来なら2019年12月に発売する予定だったが、思わぬトラブルに見舞われた。「新型N-WGN」の電動パーキングブレーキに不具合が見つかって生産が止まり、フィットも同様のユニットを使っていたから、発売が2020年2月に延期された。つまり実質的な受注期間は長い。第46回東京モーターショー2019における初披露から発売までに、約4カ月が経過していた。

電動パーキングブレーキの問題で一時生産が止まっていた「N-WGN」。この影響で新型フィットも発表・発売が大きく遅れた

 しかもフィットは、2001年に発売された初代モデルから堅調に売れている。国内における保有台数は、2018年末のデータで183万台だから、日本国内におけるホンダ車では最も多い。今は新車需要の80%が乗り替えに基づくため、従来型の保有台数が豊富なら、常識的に考えれば受注台数とその後の登録台数を伸ばしやすい。

 ところが、ホンダ車の過去の販売推移を振り返ると、必ずしもそうなっていない。1994年に「オデッセイ」が登場してヒットしたが、1996年に「ステップワゴン」が発売されると、オデッセイの登録台数は次第に下がり始めた。そのステップワゴンも、2001年に「フィット」がデビューすると伸び悩んでしまう。好調だったフィットも、2011年末にN-BOXが発売されると販売が下がり始めた。

 このようにホンダでは、斬新なコンセプトに基づいた人気車が登場して多くの新規ユーザーを獲得するのに、その需要を次のモデルに繋げるのが苦手だ。新たなヒット商品が生まれると、既存の車種が犠牲になってしまう。

■N-BOXに喰われた先代型 新型は工夫されたグレード展開

 背景にあるのは、販売会社の販売力よりも、メーカーの国内対応力だ。複数のフルモデルチェンジやマイナーチェンジが一時期に重なり、ひとつの車種に十分な販売力を費やせないこともある。

 ちなみに先代フィットは2013年9月に発売され、この時の1カ月後の受注台数は6万2000台と発表された。新型が3万1000台だから、先代型は2倍の受注を獲得した。先代型も発売前のティザーキャンペーンを行ったが、新型に比べると圧倒的に多かった。

 この受注格差は、先代型と新型の商品力によるものではなく、先代型と先々代型の違いと考えるべきだ。初代と2代目(先々代型)フィットは好調に売れて人気車になり、3代目の先代型に期待するユーザーも多かった。この時点で先代N-BOXは発売されていたが、2012年の届け出台数は21万台だ。好調ではあったが、2019年に25万台を届け出した現行N-BOXに比べると、当時はまだ勢いが弱かった。そのために先代フィットは受注を大量に獲得できた。

快調な売り上げを記録していた初代と2代目。先代(3代目)はそれに比べると劣る結果となった

 しかし新型フィットは事情が違う。まず先代型が好調な受注を獲得しながら、発売直後のリコールとボディスタイルの不評で売れ行きが伸び悩んだ。さらに2017年にはN-BOXがフルモデルチェンジを受けて絶好調に売れ、これも先代フィットの販売力を奪った。

 先々代の2代目フィットは、ハイブリッドを追加した効果もあってモデル末期の2012年にも21万台(1カ月平均で1万8000台)を登録したが、先代型のモデル末期となる2019年は7万4000台(1カ月平均で6200台)に留まる。比率に換算すれば35%だ。この流れを受けて、新型フィットの初期受注台数も、先代型の半数となった。

 以上のように新型フィットの出足は先代型に比べて悪いが、今後の展開はわからない。先代型で不評だったフロントマスクなどのデザインを改め、視界、取りまわし性、スイッチ類の操作性なども向上させた。ハイブリッドシステムは高機能化され、ホンダセンシングの安全機能や全車速追従型クルーズコントロールなども進化している。

 さらにメーカーオプションの種類を減らすことも視野に入れ、グレードを増やした。「ベーシック」「ホーム」「ネス」「リュクス」といったグレード名はわかりにくいが、SUV風の「クロスター」を加えるなど、流行に沿ったグレード展開も見せている。そして燃料タンクを前席の下に搭載する方式により、後席と荷室の広さは、従来と同じく全高が1550mm以下のコンパクトカーではナンバーワンだ。

前列右から「ホーム」「クロスター」。後列右から「ベーシック」「ネス」「リュクス」

次ページは : ■ライバル「ヤリス」の動向と新型フィットが背負うホンダの浮沈

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