モーター”スポーツ”とは言うが、果たしてレーシングドライバーはアスリートなのか?! クルマを操るのにフィジカルは必要なのか!? 実は、レースの世界では、速さ以前に「耐え続けられる身体」を作れるかどうかが問われる。では、レーシングドライバーは何を鍛え、どこまで追い込まれているのか。実体験と計測データをもとに、その裏側をひも解いていく。
文:中谷明彦/写真:ホンダ、日産、富士スピードウェイ、Adobe Stock、Red Bull Content Pool
【画像ギャラリー】クルマの中で何が起きている? 身体にかかる想像以上の負荷! 知られざるプロドライバーの裏側(8枚)画像ギャラリースポーツっていうけどレーサーのフィジカルってすごいの?
レーシングドライバーはただ車に乗ってハンドルを左右に切り、3つのペダルを操作するだけ、とよく言われる。その運動量自体は大したことないのに、なぜ激しいトレーニングをしなければいけないのか? という問いに対して、常に次のように解説してきた。
まず、ノンアシスト時代のステアリング操作そのものは非常に重く、また過大な横Gが加わっているため、ただ操舵するだけでなく、補舵をしなければいけない。
また路面や縁石などからのタイヤへのキックバック入力がダイレクトにステアリングへと伝わってくるので、いついかなる異常な入力に対しても正確なハンドル位置を補舵していなければならないことなどがある。
よって常に両手でステアリングをしっかりと握っていなければ、いつハンドルを取られてしまうかわからない。 その結果、クラッシュにつながり、また生命にも危険が及ぶということで、特に握力、腕力のトレーニングが非常に重要だと語ってきました。
そのほか、ペダル踏力についても、アクセルは常に全開を保つように踏み続け、また横Gなど過大なGがかかった時でも微妙なミリ単位以下の力加減でアクセルワークをしなければならないこと。ブレーキングでは激しい制動Gが加わりつつも、ブレーキ踏力も微妙に加減して操縦性に繋がる操作をしなければならないこと。
当時のマニュアルミッション仕様のフォーミュラカーなどではクラッチペダルがあり、それが非常に重く、またサーキット1周の中でも数十回の操作が求められ、1レースとなると数百〜数千回に及ぶ操作が必要になる。
フォーミュラカーのようにシフト操作を行う右手についてはシフトレバーを握り続け、同じく数百から数千回のシフト操作が必要なことなどがあるのだ。運動する範囲は小さく、非常に力を込めて、また慎重に扱わなければならないので、外から見ている以上に過酷な状況に置かれていると言える。
脚力はJリーガー並で握力は60キロ超え!?
こうした問題に対処するために、慈恵医科大学病院のスポーツ外来を受診し、自分の能力の至らない点、またさらに磨き上げなければいけない点などを検査し、それに基づくトレーニングメニューを立てて行ってきた。
それまでにすでに相当のキャリアを積み重ねていただけに、まず自分の踏力が非常に高いということに驚いた。当時の計測では、 Jリーガーのサッカーの選手とほぼ同じ脚力があったということがデータで示された。
また、反応時間も極めて速く、動体視力についてはアフリカのとある部族に匹敵する「7.0」の動体視力がすでに備わっていた。握力も同様で60kgを超える握力が両手に備わっていたのだ。
一方で、足りない部分は有酸素運動における、心肺機能能力だった。トレッドミルで心肺能力を計測すると、全速力で駆け足しワークアウトするまで走るが、その計測室で嘔吐するほどきつく、回復の相当の時間がかかった。
その数値は極めて低レベルで、一般の人と同程度という判定がなされ、筋力トレーニングは引き続き行い、有酸素運動を特に高めるということで、油圧式室内自転車によるトレーニングが推奨されたのだ。










コメント
コメントの使い方