身体を酷使するアスリートだからこそダメージが蓄積される
このようにレーサーは頭の先からつま先まであらゆる部分が過酷なG環境にさらされ、どこか一箇所でも弱いところがあると、たちまちに疲労が蓄積され、そこが弱点として曝け出してしまうということがわかる。
自分の場合はもともと雑誌の編集部員であり、アスリートではなかったため、基礎体力で大幅な後れを取っていることがわかった。初めてF3000に乗ってテストをした時に、腰への負担が過酷で腰痛を引き起こし、その過酷さの実態を知った。
そしてスポーツ外来の研究チームとともに弱点を克服する様々なトレーニングメニューを作ったというわけだ。
こうしたトレーニングを毎日地道に続けるということがレーシングドライバーには常に求められていて、それを継続することが最も辛く厳しいことである。その継続を諦めた時は、ドライバーを諦める時と言っても過言ではないほどである。
当時のトップドライバーであれば、日常的にテスト走行が求められ、自然と筋力トレーニングの効果が得られるので、ストレッチングだけでも十分維持できたが、ひとたび走る機会が減少してくると、筋肉はたちまち衰えていってしまう。
一度クラッシュをして足を骨折し、 2週間ほどギプスをしていたが、ギプスを外した時には脚の筋肉が大幅に衰え、脚が二回りも細くなってしまっていたのには驚かされた。その衰えは現在も残っていて、今でも右足と左足の太さが異なっているほどである。
もちろん左足中心にトレーニングして脚力は取り戻していったが、なかなかその右足との差を詰めることはできなかった。
プロのスポーツ選手、競技者として……
これらのトレーニングを続けるためには、生活の時間の多くの部分を犠牲にする必要があり、そのためには他の仕事と両立することが難しい。
トッププロレーサーであり続けるためには、こうしたトレーニングをこなしている時間も含めて、生活できるだけの収入を得る必要があり、それはほんの一握りのドライバーにしか与えられない特権である。一般的には仕事と両立しながらこの過酷なトレーニングを継続するということが求められるのだ。
レースというまあ華やかな世界ではあるが、また、大好きなレーシングカーをドライブするという喜びの裏には、実はこうした多くの苦労が積み重ねられているのである。
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