冬の朝、冷え切った愛車のエンジンを始動する。かつては水温計の針が動くまで、あるいは回転数が落ち着くまでじっと待つ「暖機運転」がドライバーの常識であった。おじさんたちは回転数が落ち着くまでとか、エンジンの鼓動に耳をそばだてていただろう。しかし、2026年現在、自動車の進化はおじさん世代の「常識」を過去のものへと追いやっているってマジなのか。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、日産、スズキほか
【画像ギャラリー】旧車なら暖気必須!? エンジンの進化に合わせた「暖気」のあり方があるってマジか!(13枚)画像ギャラリーなぜ「停車暖機」は不要になったのか
かつて暖機が必要だった最大の理由は、燃料供給装置が「キャブレター」だったから。温度や湿度でエンジン始動がぐずったりするのはまさにクルマと対話する必要もあって、あれはあれで楽しかったのだが、今やエンジン始動が難しいというケースはない(ロータリーエンジンはちょっとヒヤヒヤするケースもあるが)。
現代の車は高度に電子制御された「インジェクション(燃料噴射装置)」を備えているから、外気温やエンジン状態をセンサーが瞬時に感知し、どんな気候でも基本的にはスムーズにエンジンがかかる制御がされている。
最適な燃料濃度を保ちながら始動直後からエンジンは安定して回るし、エンジンオイルの性能向上も見逃せない。低粘度でも低温時から高い流動性、低フリクション性能を発揮する現代のオイルは、始動から数十秒もあればエンジン全体に行き渡るのだ。
停車暖機が抱える「3つのリスク」
ヨーロッパでは暖機運転が禁止されているケースもあるが、日本でも基本的には法的に禁止されている行為ではない。クルマ好きならむしろわざわざ時間をかけて暖機運転をするのが嗜みでもあり、おじさんたちにとっては長年の習慣だったりする。しかし停車したままの暖機(アイドリング)にはデメリットもある。
まず綺麗事にはなるが環境と燃費への悪影響は少なからずある。10分間のアイドリングで消費する燃料は微々たるものだがチリも積もれば燃費悪化を招くだけでなく、不要な排出ガスやCO2を垂れ流すことになるのは事実だ。
エンジンへの攻撃性アイドリング状態は燃焼温度が上がりにくく、燃料が完全に燃えきらない「未燃焼ガス」が発生しやすい。これがエンジンオイルを希釈したり、カーボン(煤)を堆積させる原因にもなるのだ。
そしてエンジンが暖機できたとしても、トランスミッションなどのオイルは停車したままでは完全には回りきらない。エンジンだけ絶好調でもクルマとしてのバランスは悪くなってしまうのだ。
【画像ギャラリー】旧車なら暖気必須!? エンジンの進化に合わせた「暖気」のあり方があるってマジか!(13枚)画像ギャラリー2026年の最適解:それは「走行暖機」だ
では、エンジンをかけたら即、全開走行でいいのか? もちろん、答えは「否」だ。今の車に求められているのは、走りながら温める「走行暖機(ウォームアップ走行)」である。
エンジン始動後、シートベルトを締め、ナビを設定する程度の数十秒があれば、オイルの循環には充分。その後、水温計が適温を示すまで、あるいは軽自動車などであれば青い低温表示灯が消えるまでは、アクセルを穏やかに開け、回転数を抑えて走行する。これこそが、エンジン、ミッション、そしてタイヤやサスまでを労わる「最高のメンテナンス」と言えるだろう。
ただ暖機を絶対にしてはいけないというワケではない。例えば氷点下10℃などの特殊環境下ではオイルの流動性も悪化しているケースもあるし、窓ガラスなどの凍結など走るための準備時間も必要。またチューニングカーなどはまったく扱いが異なるので、しっかりとした暖機も必要なケースも多い(特に固いオイルを入れている場合など)。
まとめになるが、おじさん世代が考える「クルマは機械だ。温めなければ本領を発揮できない」という考え方は正しい。人間が布団から出て全力ダッシュするのを避けたいのと同じだ。しかし、クルマの「温め方」をアップデートすべき時が来ている
令和のドライバーに求められるのは、近所迷惑なアイドリングを続けることではなく、エンジン始動後速やかに、かつ優しく走り出すスマートさだ。それこそが、愛車の寿命を延ばし、環境にも配慮した「真のクルマ好き」の作法ではないだろうか。
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