走りも良かったホンダの力作ミニバン!!! エリシオンが初代限りとなった理由 【偉大な生産終了車】

■走りや3列目への「気配り」が裏目に? エリシオンの敗因とは

 なかなかの力作と思えたホンダ エリシオンの売れ行きがパッとせず、1代限りで消滅してしまった理由。

 それは結局「ユーザーの嗜好を読み間違えた」ということに尽きるのでしょう。

 Lサイズミニバンであっても「地に足のついた走り」でなければならない――との考えから、エリシオンは前述のとおり底床・低重心な設計となり、そのため、ライバルの全高が約1.9mであったのに対し、エリシオンのそれは約1.8mに抑えられました。

 またエリシオンの3列目シートは左右に跳ね上げて格納する方式ではなく、座面だけを持ち上げて前に寄せる方式であったため、3列目を格納した際の荷室(特に奥行き)は、ライバルと比べるとどうしても狭くなります。

エリシオンの内装とシートを倒した例(下)。当時の資料からは、現在も3列シートの課題となっている「3列すべてのシートにゆとりと快適性をもたせる」ことへの労苦も垣間見える

 しかしその分だけエリシオンの3列目シートはしっかり作られており、なかなか上質な座り心地を味わうことができたのです。

 さらにフロントマスクも、「あまりにも押し出し感が強いデザインはいかがなものか……」と開発陣が考えたかどうかは知りませんが、結果として、同種のLサイズミニバンと比べれば格段に上品な顔立ちとなりました。

 これらのこと、つまり「背をやや低くすることで走りを向上させ、荷室容量を多少犠牲にしてでも3列目の座り心地にこだわり、そして上品な顔立ちにする」というのは、ホンダとしては「良かれと思ってやったこと」です。

 しかし、その思いは通じませんでした。

 市場は、というかLサイズミニバンを好むユーザーの多くは、「そんなことよりも、押し出し感の有無のほうがはるかに重要である」と判断したのです。

 そのためホンダはあわてて2006年12月に「押し出し感が強い系」であるエリシオン・プレステージを追加したわけですが、最初に付いた「エリシオン=威張りが利かないLサイズミニバン」というイメージを覆すことはできず、プレステージの販売もまた苦戦しました。

リア。日本では初代のみとなったが、生産終了から3年を経た2016年1月中国市場で2代目が発売。全長・全幅・全高は4940mm、1845mm、1710mmと、さらに大柄となっている。

 というか、確かにエリシオン・プレステージは押し出し感を狙ったデザインになっていますが、今にして思えばやや中途半端だったようにも思えます。

 もっとゴリゴリでベタベタなフロントマスクにしたならば、もしかしたら、もうちょっとは売れていたのかもしれません。

 まぁこのあたりについては今さら言っても詮ないことで、とにかく、ホンダは読み間違えたわけです。残念ですが、「でもまぁ仕方ない」とするほかありません。だって、人は誰だってたまには失敗するのですから。

■ホンダ エリシオン 主要諸元
・全長×全幅×全高:4840mm×1830mm×1790mm
・ホイールベース:2900mm
・車重:1940kg
・エンジン:V型6気筒SOHC、2997cc
・最高出力:250ps/6000rpm
・最大トルク:31.5kgm/5000rpm
・燃費:9.8km/L(10・15モード)
・価格:451万5000円(2004年式VZ)

【画像ギャラリー】先進・上質を目指したホンダの3列ミニバン!! エリシオン/エリシオン プレステージをギャラリーでチェック!!!

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