ホンダ バモスの革新性 時代の波に消えた軽バンの異端児【偉大な生産終了車】

■N-VANの登場、側面衝突の新基準…バモスが超えられなかったもの

 アンダーフロアミッドシップならではスペースユーティリティと走りで20年近くにわたって愛され続けたホンダ バモスが、(2代目を初代と切り離して考えるなら)1代限りで生産終了となった理由。

 それは、結局は「さすがに古くなった」ということに加えて、「同門からN-VANが登場することになったから」という2点に尽きるのでしょう。

 前段で述べたとおり、アンダーフロアミッドシップレイアウトがもたらすスペース効率と走りの良さが売りだったホンダ バモスでしたが、ダイハツ タントなどのいわゆる「軽スーパートールワゴン」というジャンルが登場してからは、その優位性は決して圧倒的なものではなくなりました。

 また、タントのような新世代軽自動車の動力性能や燃費性能が向上していくなか、そこそこ重いボディに旧態依然とした3速ATを組み合わせていたバモスのそれは、年を追うごとに色あせて見えるようにもなっていきました。

 そこにとどめを刺したのが、2015年6月15日に国土交通省が発表し、2018年6月15日以降の新型車に適用されることになった「電柱などの側面衝突の乗員保護基準」です。

 これは、電柱を模したポールと32km/h(軽自動車など車幅1.5m以下の自動車は26km/h)の速度で衝突試験を実施するというものですが、バモスはこれをクリアすることができませんでした。

ホンダ独自の「Gコントロール技術」を採用し、1998年10月の新基準をクリアする世界最高水準の衝突安全性能を達成したバモス(登場時)。しかしより新しい安全衝突基準の登場が、バモスの岐路のひとつになったのかもしれない

 もちろんすべてを作り変えるフルモデルチェンジを敢行すれば、この通称ポール側面衝突基準をクリアできる3代目(実質2代目)のバモスを作ることもできたでしょう。

 しかし大好評のNシリーズから「N-VAN」が派生モデルとして登場し、それがかなり売れるだろうと読めているなか、そこまで数が売れるかどうかわからないバモスに「フルモデルチェンジ」に伴う大金を投じるのは、経営的にはいささかナンセンスです。

 それゆえバモスはあっさりと車種整理の対象となり、入れ替わる形でN-VANが登場したのです。

 以上の流れは「必然」であるため、そこに特に異議はありません。しかし中古車市場で依然高値で売買されているバモスの姿を見るたびに、「できれば3代目バモスもちょっと見てみたかったな……」と思うことは、たまにあります。

■ホンダ バモス 主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1775mm
・ホイールベース:2420mm
・車重:1030kg
・エンジン:直列3気筒SOHCターボ、656cc 
・最高出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:9.5kg-m/3700rpm
・燃費:14.8km/L(10・15モード)
・価格:139万4400円(2005年式Mターボ)

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