日本メディアがあまり伝えない、佐藤琢磨選手と復興支援の深い繋がり

「この勝利が、まだ震災の影響が残っている日本に、いいニュースとなってくれるといいですね」

 2017年5月28日、快晴に恵まれたインディアナ州インディアナポリス、アメリカのオープンホイールレース最大にして頂点である「インディ500」にて、日本人初(アジア人としても初)優勝という偉業を成し遂げた佐藤琢磨選手は、彼を取り囲んだ全米のメディアに対して、確かにそうコメントしました。そしてそれにはもちろん、理由があります。

 本記事では、(残念ながら日本メディアでは比較的紹介されることが少ない)東日本大震災直後から地道に復興支援を続けてきた佐藤琢磨選手の活動を(これでもほんの一部ですが)紹介します。

【5分でわかる】 佐藤琢磨 インディ500 日本人初優勝の“凄さ”も参照
文:ベストカーWeb編集部 写真:With you Japan、INDY CAR、松本浩明


■東日本大震災発生直後に集まったグローブ

 佐藤琢磨選手の東日本大震災復興支援活動は、2011年の震災直後にさかのぼります。

 2011年3月15日(現地時間)、その前年よりインディカーシリーズに参戦を開始した佐藤選手はこの日、アラバマ州で実施されたオープンテストで車体に大きく「Pray for Japan」と掲げ、多くの被災者の安全を祈ったことからスタートしています。

 日本現地ではまだまだ情報が錯綜し、アメリカではなかなか詳細情報が入りづらい状況のなか、佐藤選手は開幕戦(2011年3月27日)に参戦するドライバーたちひとりひとりに声をかけ、「アメリカと日本が手と手を取り合って協力しあう友情の証となること」を期待してと、参戦選手のサイン入りグローブを集めてチャリティオークションのために寄贈しました。

 同時に佐藤選手は復興支援プログラム「With you Japan」を発表。長期的な支援を視野に入れた活動団体を立ち上げます。

「With you Japan」公式ホームページより(2011年3月25日、フロリダ州セント・ピーターズバーグにて復興支援のために協力してくれたドライバーたちと。選手たちがそれぞれグローブ越しに固く手を握り合っているところが泣ける)
http://www.withyoujapan.org/ja/

 上記のように、佐藤琢磨選手は震災直後から復興支援を開始しており、その活動はインディカーシリーズとともにありました。だからこそ冒頭のコメントとなるわけです。

「日本は困難に直面しています。被災者の皆さんは言葉では言い表せない苦痛を経験され、とりわけ子供たちは大きな恐怖を感じ、先の見えない不安な状態が続いていると思います。自分にできることは限られていますが、インディカーシリーズを戦っていることもあり、アメリカから日本を少しでも支援する活動を行ないたいと思います。いまこそ、全員が手と手をとりあい、心をひとつにして歩む時です。このキャンペーンにより、多少なりとも被災地の皆さん、特に子供たちの力になれることを願っています」 (佐藤琢磨選手、2011年3月の公式発表コメント)

■「With you Japan」と佐藤琢磨選手の主な活動

 佐藤琢磨選手の復興支援活動は、主だったものを挙げるだけでも大変な量になります。

 まず2011年4月から多くのインディカーシリーズ戦にてサーキットにチャリティブースを設置。募金箱と「With you japan」Tシャツ販売収入を全額寄付するだけでなく、レース開催中は毎日のようにブースへ顔を出し、支援してくれたファンに感謝を示すとともに交流を深めています。

 またツインリンクもてぎと協力して、被災地の子供たちとその保護者をサーキットに集めてイベントを実施したり、そのイベントに交流のあるドライバーやアスリートを呼んで盛り上げたり。

「震災以来、遠出をしたことのなかった子供たちにとって泊まりがけの小旅行となっただけではなく、国籍を越えて協力しあい挑戦を続ける姿を見て、子供たちは何かを掴んできたであろうと思う」(「With you Japan」公式サイトより、参加された保護者の方のコメント抜粋)

 毎年5月に開催されるインディ500では、ヘルメットのデザインを一般公募して、決勝で着用。年末にそのヘルメットをチャリティオークションに出品して売上を寄付しています。

 宮城県のスポーツランドSUGOで開催されるフォーミュラ・ニッポン第6戦には、仮設住宅に住む子供たちやその保護者を招待して観戦ツアーを実施。2013年からは江崎グリコ株式会社の協力のもと、レース会場にて小学生の子供たちがカートを体験できるコーナーを設営(2014年には東北でのチャリティイベント(11/24)に加えて土砂災害のあった広島のスポーツランドTAMADAでもカートイベントを実施)。

 このキッズカート体験会は大変な盛況で、現在はシリーズ化しており、初心者から本格的なレースデビューを考えているキッズまで幅広く受け付けています。

この写真は2014年11月24日に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された「With you Japan TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」のもの。この回は宮城県亘理郡山元町の親子と、主旨に賛同したボランティアスタッフ総勢150名以上が集まった(写真:松本浩明/ベストカー2015年1月10日号より)

 2017年は全国8カ所のサーキットで開催予定。詳細は公式サイトをご覧ください。

 2011年の震災直後から、ずっと復興支援を続けている佐藤琢磨選手。

 東日本大震災から6年が経過しましたが、いまも東北被災3県では33,748世帯、71,111名の方が仮設住宅での生活を余儀なくされています(2017年2月末時点/河北新報社より)。

 インディ500の優勝コメントは、3大ネットワーク+CNNだけでなく、全米メディアが大きく取り上げます。「知ってもらうこと」「関心を持ち続けてもらうこと」、地道に活動を続け、広報・周知活動の大切さを知り尽くしているからこそ、佐藤琢磨選手はその人生最大の晴れ舞台で、震災復興について語ってくれたのだと思います。

 本誌は今後も佐藤選手の活動を応援していきます。

(活動の詳細をさらにお知りになりたい方はぜひこちらをご参照ください)

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