国内自動車メーカーは販売の主軸を海外に向けつつ、日本のためのクルマも作り続けていてくれる。しかしそもそも「日本のためのクルマ」とはどんなクルマなのか? ベストカーでもおなじみの自動車評論家のお二人に見解をうかがった。
※本稿は2026年5月のものです
文:渡辺陽一郎、岡本幸一郎/写真:日産、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2026年6月10日号
渡辺陽一郎「コンパクトで運転しやすく高い安全性も大切」
日本は道路や駐車場が狭く交通量は多い。所得は直近では上昇傾向だが、1990年代後半からあまり上がっていない。その一方で車両価格は約1.5倍に値上げされた。
安全装備や運転支援機能が充実したのは歓迎すべき進化だが、税金も高く新車を購入しにくい。運転免許保有者の多い団塊世代が高齢化して、運転ミスを防ぐ安全装備も重要だ。
そこで日本のためのクルマを考えると、まずボディがコンパクトで視界が優れ、事故に繋がる周囲の危険を早期に発見できることが大切だ。そのような車種は運転もしやすい。事故を防ぐ先進安全装備も欲しい。
所得が変わらず車両価格が値上げされると、ボディやエンジンを小さく抑える必要が生じるため、コンパクトで車内の広い車種が求められる。その結果、国内で売られる新車の4割近くが軽自動車で、小型/普通車でもコンパクトな車種が販売ランキングの上位に並ぶ。
その一方で開発者は「日本のお客様は品質への要求が高い」という。塗装を含めた内外装の上質感も、日本のためのクルマに不可欠だ。
日本には道幅の狭い峠道が多く、コンパクトなスポーツカーも欲しい。特に今後の国内需要を守り、自動車産業が意欲的な人材を集めるためにも、若年層が魅力を感じて容易に購入できる新型車を国内へ積極的に投入しなければならない。
岡本幸一郎「手頃なサイズで多人数乗車可能な実用性が大切」
日本のためのクルマなんだから、どれくらい日本で売れているかが目安になるはず。ということで、まずはどれくらい売れているかを調べてみた。
それを前提に、売れているクルマのなかでも、グローバルカーが日本でも売れているケースに該当するのか、日本市場だからこそ売れているのかを考えれば分かってくるはずだ。
自販連のデータを見ると、上位にいるのはミニバン系とSUV系が圧倒的だ。
ただし、SUV系は基本的に日本だけでなくグローバルな市場に向けて開発されたもので、それが日本でも売れているというパターンと見られる。
対してミニバン系は、海外で販売されているものもあるが、基本的には日本市場のことを考えて開発されたものと見ていい。
日本のユーザーがどういうクルマを欲しがるかの傾向としては、やはり手頃なサイズで多人数乗車ができる実用性の高いクルマの人気が高い。なのでミニバンとハイトワゴンが中心になってくる。もちろん売れている車種ばかりだ。
ということで、日本のためのクルマというのがどういうクルマかというのは、そういうクルマということでよろしいのではないかな。
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