トヨタが日本一……いや世界一の自動車メーカーであるのは誰もが認めるところだ。ではなぜナンバーワンでいられるのか。それはグループ各社の支えがあるからに他ならない。ここでは、裏方の大黒柱「豊田通商」にスポットを当てる。
※本稿は2026年8月のものです
取材・文:鈴木直也/写真:豊田通商、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年9月10日号
トヨタの屋台骨を支え続ける総合商社
●豊田通商(とよたつうしょう)とは?
1948年設立のトヨタグループ唯一の総合商社で、本社は名古屋市。自動車関連事業を中核に金属、機械、エネルギー、化学品、エレクトロニクス、食料、アフリカ事業など幅広い分野で事業を展開。
単なる商社機能にとどまらず、事業投資や物流、モビリティサービス、再エネ事業に加えリサイクル事業も手掛ける。世界約130カ国・地域で事業を展開し、トヨタグループの国際事業を支えている。
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ジャストインタイムで知られるトヨタ生産システム。必要なパーツが必要なタイミングで組み立てラインに届くことで、在庫を持たずに流れるように部品から製品へと姿を変えていく。これぞトヨタの強さの源泉、そう言われて久しい。
ところが、コロナ禍、ウクライナ戦争、そしてイランでの戦乱など、世界はどんどん予測不能なカオスへ向かっている。あまりにタイトで精密なサプライチェーンは、突発事態には脆弱。
どこかひとつが切れただけでラインがストップし、たちまち仕掛品(未完成品)の山を築いてしまう。「経済安全保障」という概念からも、こういう状況は好ましくない。そんな認識が世界中に広がりつつある。
そこで不思議に思えるのがトヨタだ。ジャストインタイムの元祖なのに、なぜかサプライチェーン危機とほぼ無縁。他メーカーが生産停止に追い込まれる状況でも、トラブルゼロとは言えないまでもトヨタのラインは稼働している。これは一体なぜなのだろう?
トヨタグループの課題に応える「トヨタ専用コンビニ」
その秘密を解くカギは意外なところにある。そんな情報をたどって、名古屋へ取材に向かうこととなった。目的地は、トヨタグループの商社「豊田通商」だ。
トヨタを支えるグループ企業として有名なのは、デンソーやアイシンといったティア1サプライヤー。それに比べると、豊田通商は「知る人ぞ知る」存在であり、意外に影が薄い。正直、筆者自身も「普通の商社でしょ?」という認識だった。
ところが、豊田通商の歴史を調べてみると、実はデンソーやアイシンに匹敵する歴史と伝統を誇る会社。1936年に設立されたトヨタ金融株式会社が、そのルーツとなっている(この時代に販売金融会社を作る先見性!)。
その後、戦争→敗戦→財閥解体という荒波を乗り越え、社名を豊田通商株式会社に改めて再出発を果たすのが1956年。以後はトヨタグループのありとあらゆる課題に応える商社として成長を続けている。
その仕事ぶりは、商社というより「トヨタ専用のコンビニ」と表現するほうがふさわしい。
たとえば、自動車のバリューチェーンを最上流までたどると、鉄やアルミなどの資源採掘に源流がある。さすがに、豊田通商は鉄鉱石やボーキサイトを掘っていないが、アルゼンチンのリチウム鉱山やインドのレアアース精錬の権益確保といった戦略物資をちゃんと押さえている。
しかも、これらの資源開発に着手したのはEVブームや中国のレアアース輸出制限が起こるよりずっと前だというから恐れ入る。
バリューチェーンの流れの先を追ってゆくと、そこには“鉄”のサプライを一手に引き受ける豊田通商がある。
名古屋港臨海工業地帯に20万トンの各種鋼板を保管。その鋼板から2万種類もの素材を切り出し、毎日7500トンのプレス用鋼板を出荷し続けるという凄まじい仕事。今回はその加工工場を視察したのだが、スケールのでかさには度肝を抜かれてしまった。
もちろん、その鋼板を届けるのも豊田通商。毎日毎日コンビニに商品が届くように、名古屋周辺のトヨタ系工場には注文どおりに切り出された鋼板が届けられる仕組みになっているのだ。
さらに、豊田通商は出来上がったクルマの販売も手がけている。
もちろん、北米やEUといった大きな市場は本家トヨタが自前の販売チャンネルを構築しているが、アフリカに代表される途上国になると豊田通商の独壇場で、そのためにアフリカ54カ国で2万3000人の現地人を雇用。
ついでに、カンボジア、ケニア、ガーナなどではトヨタ車のノックダウン工場まで運営しているから、「いったい何なんだこの会社は!」と叫びたくなってくる。











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