誰かがやらねばならない仕事をする
そしてバリューチェーンの最下流、クルマのリサイクルでも豊田通商はグローバルに事業を展開している。
そのスケールは工場から620万トン、市中から480万トン、廃車から10万トンのスクラップを毎年回収するレベル。
トヨタの年間生産台数はざっくり1000万台といわれているが、仮にクルマ一台を1トンと計算すれば、ほとんど「行って来い」と言えるほど高いリサイクル率を誇っているわけだ。
今回はそのリサイクル事業の現場も視察したのだが、シュレッダーで粉々にされた自動車の“破片”が、さまざまな分別プロセスを経て素材ごとに分かれて回収されてゆく流れが壮観だった。
もちろん、まだまだ人の手で分別しなければならない工程もあるのだが、やっぱりリサイクルは分別が命。分別の精度が上がれば上がるほど、リサイクル素材の競争力が向上し、ビジネスが回りはじめる。
こうして豊田通商の仕事を見てくると、なぜトヨタのサプライチェーンが強いのか、それがだんだんわかってくる。
元祖ジャストインタイムのトヨタは、元祖だけに真っ先にサプライチェーンの強靭化にも着目していたはず。そして、効率と強さを両立させるため、最も重要なプレイヤーが豊田通商だったという構図だ。
大胆な未来予想でリチウムやレアアースの権益を確保するのも、必要な在庫を持ってグループ各社に向けた鋼板や半導体の安定供給を支えるのも、どちらもジャストインタイム的な発想とは対照的。効率より安定供給を重視するビジネスだ。
これは、アフリカなどの途上国への完成車輸出やノックダウン生産、そしてリサイクル事業なども同じ。つまり、効率よく儲かる商売ではないけれど、誰かがやらねばならない不可欠な仕事、というヤツだ。
それを象徴しているのが、共和産業という子会社によるサンバイザー生産事業だろう。誰が考えたってサンバイザーは付加価値の高い部品ではないわけで、それゆえ事業者がどんどん撤退したり海外移転してゆく。しかし、どんなクルマにもサンバイザーは必須のパーツ。もし欠品すればクルマの出荷が止まる。
この課題に豊田通商が出した答えは、驚いたことに「じゃウチが作るわ」というもの。結果、国内の全メーカー向けに供給され、市場シェア77%。グローバルでも10台に1台は豊田通商のサンバイザーが付いている。これって、もはやある種の公益事業ですよね?
というわけで、冒頭に掲げた「ジャストインタイムの元祖なのに、トヨタはなぜかサプライチェーン危機とほぼ無縁なのか?」という問い。ぼくは「そりゃ、豊田通商というめちゃめちゃ有能な裏方がいるから」と、確信をもってお答えいたします。
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