高齢ドライバーの死亡事故がまた増えた!! 75歳以上は「車両単独」が4割超…返納だけでは解決しない理由

合格率93%でも…運転技能検査に残る課題

 現在75歳以上のドライバーには、免許更新時に記憶力や判断力を調べる認知機能検査と、実車指導等を内容とする高齢者講習の受講が義務づけられています(高齢者講習に関しては、70歳以上のドライバーも対象)。

 さらに、過去3年間に信号無視や速度超過など一定の違反歴がある場合は、運転技能検査も義務づけられています。更新期間満了までに合格しなければ免許を更新できません。

 現在の運転技能検査は、コース内を走りながら、「指示速度による走行」「一時停止」「右折・左折」「信号通過」「段差乗り上げ」の5つの課題に取り組み、運転行為の危険性に応じて減点する方式。指定速度まで加速できない、一時停止線を越える、右左折時に中央線をはみ出すといった行為が減点の対象で、赤信号の無視は40点、衝突や検査員による補助ブレーキは30点、段差に乗り上げたあと正しく停止できなかった場合は20点が減点されます。

 合格基準は、第一種免許が70点以上、第二種免許が80点以上です。2025年には15万6513人が受検し、14万5935人が合格しました。受検者に占める合格者の割合は約93%。一定の違反歴がない75歳以上に義務付けられている高齢者講習も、課題内容はこの運転技能検査と同様の走行を行いますが、こちらは運転技能を確認して指導することが目的で、結果によって免許を更新できなくなることはありません。

 ただ、警察庁が運転技能検査の合格者と高齢者講習の実車指導を受けた75歳以上について、受検・受講後2年間の交通事故や交通違反の状況を調査したところ、運転技能検査の合格者における10万人当たりの人身事故件数は、検査対象ではない75歳以上の高齢者講習受講者の2倍以上だったそう。

 運転技能検査の対象となるのは、もともと一定の違反歴がある人です。両者は検査・受講前の条件が異なるため、この数字だけで検査の効果を比較することはできませんが、この結果からは、現在の検査に合格しても、事故を起こす可能性が高い人が残っていることがうかがえます。高齢ドライバーによる死亡事故で操作不適が多いことを考えても、現在の課題だけでは、事故につながる運転技能の低下を十分に把握できていないのかもしれません。

 これを受け、警察庁の有識者検討会は、運転技能検査の課題に新たに「方向変換」を追加すべきだとしています。後方や側方へ注意を配りながらハンドルとペダルを操作させることで、複数の確認と操作を同時に行う能力を確かめる狙いがあります。あわせて、「安全不確認」を減点項目に加えることや、交差点へ進入するまで一時停止しなかった場合の減点を引き上げることなども提案しています。

現在の運転技能検査では5つの課題に取り組む。有識者検討会は、新たに「方向変換」を追加するなどの改善案を示した(画像は警察庁交通局「運転技能検査の見直しに関する有識者検討会の報告書等について」より)
現在の運転技能検査では5つの課題に取り組む。有識者検討会は、新たに「方向変換」を追加するなどの改善案を示した(画像は警察庁交通局「運転技能検査の見直しに関する有識者検討会の報告書等について」より)

「返納か継続か」の二択では解決しない

 免許を返納して運転をやめれば、その人がドライバーとして事故を起こす可能性はなくなります。実際に、自主返納を選ぶ高齢者は少なくなく、2025年には75歳以上だけで約26万人が免許を返納しています。

 ただし、年齢だけを理由に一律に返納を求めることはできません。警察庁の有識者検討会も、運転技能検査の対象を一定の違反歴がある75歳以上に限定している理由のひとつとして、「免許の喪失という権利のはく奪につながり得る」ことを挙げています。身体機能や運転技能には個人差があり、公共交通が少ない地域では、クルマを失うことで通院や買い物が難しくなる人もいます。

 こうしたことを考えると、年齢だけで一律に判断するのではなく、実際の運転技能に応じた対策を考えるべきでしょう。安全な運転が難しいほど技能が低下した人には免許の更新を認めない一方、一定の技能を保っている人には、必要な教育を行ったり、運転できる車両を安全装備の充実したクルマに限定したりする方法が考えられます。

 有識者検討会でも、運転技能検査の結果に応じてサポートカー限定免許を付与することのほか、一定の年齢に達した人については、違反歴がなくても、合格しなければ免許を更新できない運転技能検査の対象とする案も挙げられました。また、事故を繰り返す人に対し、個別に対策を講じる必要性も指摘されています。

 検査の結果、免許を更新できなかった人への対応も欠かせません。検討会では、公共交通が少ない地域に配慮し、免許を更新できなかった人にもミニカーの運転を認めるなど、代わりとなる移動手段を検討すべきだという意見も出ています(ミニカーは、道路交通法上は普通自動車に区分される小型の三・四輪車で、現在は運転に普通免許が必要です)。

有識者検討会では、運転技能に応じたサポートカー限定免許の付与や、免許を更新できなかった人の移動手段も検討課題に挙げられた(画像は警察庁・都道府県警察による広報ポスター)
有識者検討会では、運転技能に応じたサポートカー限定免許の付与や、免許を更新できなかった人の移動手段も検討課題に挙げられた(画像は警察庁・都道府県警察による広報ポスター)

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 運転技能を適切に判定し、その結果に応じて教育や車両の制限、免許を更新しない措置を組み合わせるとともに、運転をやめた人の移動手段を確保する。一人ひとりの状態に応じた選択肢を整えることが、高齢ドライバーによる死亡事故を一件でも減らすことにつながるのではないでしょうか。

 高齢者の移動を支えながら事故を防げるよう、運転技能検査をはじめとする制度が、より効果の高いものへと改められることを期待したいです。

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