絵画や音楽などでは、アーティスト本人の死後にようやく作品が正当に評価されるという例が少なくない。クルマにも心当たりがないだろうか? ここでは登場から年数を経て、その斬新なデザインが評価され始めたクルマをご紹介する。
※本稿は2026年8月のものです
文:伊達軍曹/写真:スバル、トヨタ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年9月26日号
現在流行中のスタイルは過去の“異端”あってこそ
自動車デザインの世界では、時に「正しいが、登場タイミングとして早すぎた造形」が“異端”として扱われる。
だが登場当時は「あまりにもヘンテコ」「さすがにクセが強すぎる」などと酷評されたスタイリングも、時代の文脈やトレンドが追いついた瞬間、「実は先駆者だったよね」という評価へと変貌するものだ。
今日、私たちが街で見かける最新電動車の未来感やSUVのゴツ系スタイル、あるいは洗練されたレトロモダンのスタイルなどは、実は多くの「過去の異端児」たちが切り拓いた道だった。
時代に迎合せず、デザインの未来を本気で予測していたからこそ、今見ると絶妙にクールで味わい深いクルマたち。そんなデザインを有する「大器晩成車」たちをチェックしてみよう。
実は多段ライトの元祖!? フィアット ムルティプラ
デビュー時は「世界一醜いクルマ」と揶揄されたフィアット ムルティプラの前期型だが、現在のカーデザイン視点で見れば、実に正しきアヴァンギャルドだった。
Aピラーの根元に配されたハイビームヘッドライトが作り出す多段構成ライトは、現代のSUVがこぞって採用している「ハイテク顔」の明確なルーツ。時代の審美眼がようやく、「世界一醜い」と言われたクルマが内包していた先進性、そして天才性に追いついたと言えるだろう。
その中古車は今や残念ながらやや希少だが、それでも一部のマニアックな店舗にて、総額80万~180万円ほどで見つけることは充分可能だ。
●中古車相場:80万~180万円
普通の顔になった後期型は激安。変顔のほうが人気なのだ。
軽に「デザイン」という概念を注入! スバル R1
軽自動車=車内空間を1cmでも広く、という、まだ実用主義一辺倒の時代だった2005年に投じられた異色のプレミアムコンパクト。
限られた軽規格の枠内で、あえて後席空間を削ぎ落としてまで追求したパーソナル感と凝縮された優美なスタイリングは、まさに贅の極み。
当時は「狭くて使いにくい」と市場に相手にされず爆死したが、パーソナルな空間と、上質さを求める現代の価値観で見れば、その佇まいは今なおきわめてエレガントと言える。
そういった諸々が再評価されてきたせいか、好条件な物件には総額200万円以上の値札が付くことも。
●中古車相場:20万~220万円
流通台数はまずまず豊富。直近の平均価格は約46万円。
「レトロモダン文脈」の始祖! トヨタ WiLL Vi
「カボチャの馬車」とも言われた、逆傾斜のリアウィンドウ(クリフカット)を持つ独創的なシルエット。ミレニアムの異業種合同プロジェクトから生まれたこのスタイルはほぼイロモノ扱いされ、若干、街の笑いものにすらなった。
だがニュアンスカラーをまとったレトロモダンな造形や、クルマをライフスタイルの一部として魅せる手法は、現代のライフスタイル訴求型コンパクトの先祖そのもの。時代は今、トコトコ走るカボチャの馬車にやっと追いついたのかも。
中古車の平均価格は約67万円だが、100万円以上の値付けとなっている物件も少なくない。
●中古車相場:40万~180万円
流通量はまあまあ豊富。良質物件の目安は総額70万円から。
























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